私の口からはなにも出てこなかったのに、不意に手が伸びてきた。

 私の頬にあたたかなものが触れる。

 出雲くんの手。

 そっと包み込んできた。

 どくん、どくん、と心臓が跳ねる。

 もう喉奥まで来ているのではないかと思うくらいだ。

「羽奈。……俺、」

 私の頬に触れて、見つめたまま、出雲くんのほうが口を開いた。

 なに?

 なにが続くの……?

 心臓を高鳴らせながら、次の言葉を待ったのに。