合唱コンクールはやっぱり私が伴奏になった。

 すぐに歌う曲も決まって練習がはじまった。

 それほど難しい曲ではない。

 でも完璧に弾くために、家でも毎日練習するようになった。

 でも不思議なのは、防音の部屋だから外には聞こえないはずなのに、練習していると出雲くんが「今、いい?」と訪ねてくるのがよくあることだ。

 どうしてわかるんだろう。

 一回聞いてみたけれど「なんとなく、雰囲気で」としか返ってこなかった。

 私はますます首をひねったけれど、それより重要なことがあった。

 出雲くんはそういうとき、私の部屋で、私の練習の様子を聴いているのだから。

 聴かれても困らないけれど、ただ、どきどきしてしまって困るのはある。

 うしろから出雲くんの気配が伝わってくる。

 弾く曲だけではなく、私が弾く姿も見られている。

 そう自覚すると、到底集中できそうにないので、私は意識して楽譜と鍵盤に気持ちを向けなければいけなかった。