あの文化祭の日から1週間が経過した。佑真は高校生と白虎総長、本郷家の密偵活動の合間を縫って私に会いに来てくれた。


そしてつい最近カミングアウトされたことだけど、佑真がこの屋敷に侵入できるように匡が手引きと使用人への誤魔化しをしているようだ。それをいいことに彼は今日もここ、百合の宮へ訪れていた。


「なんだか今日も愉快なほど大荷物だこと」


「ああ、波瑠さんこんにちは。ご機嫌いかがです?」


私は涼しい居間からせっせと何かを運び込む佑真を眺めている。彼は百合の宮と外を何往復もしていた。

一体この場所をどうするつもりなの。

そんな重労働をイタズラを試みる子供のように楽しんでいた。彼は首にかけているタオルで流れてくる汗を拭く。

時に動きを目で追っている私に笑いかけ、1つ2つ話をした。それが嬉しくてしかたなかった。


「この場所なんか寂しいなってずっと思ってたんだよね」


やっと全部運び終えひと段落ついたのか縁側に座って話す。そんな彼に私は冷えた麦茶を渡した。

隣に座って同じ目線で庭を眺めるけど、そこに彼の言う“寂しさ”は感じなかった。白い百合が多く咲き誇ってるだけ。


「百合だけ一人で咲いてて……それが誰かさんに重なって見えるんです」