青い星を君に捧げる【零】

佑真の教えに従い苦戦しながらもサンドウィッチの具材を作っていく。最初は難しかった具材切りやゆで卵の殻むきも手慣れてくる。


楽しいな。


佑真の意外に丁寧な手つきだとか、待ちきれずにつまみ食いしちゃうイタズラ心とか。新しい発見があっていつも静かな百合の宮が笑い声で包まれていく。


食事なんて楽しいものじゃない。ただの生きるための活動、だと思ってた。ずっと一人で広いテーブルで食べていた。


本邸に呼ばれても父と食事することはない。


私の中の当たり前を彼はいとも簡単に壊してしまう。

私が作っていた壁を壊して近づいて来てくれた。少しづつ色とりどりな具材が挟まったサンドウィッチが乗せられた皿で埋まっていくテーブルを写真に収める。


サンドウィッチが並ぶ最後の皿を持って居間へと足を向けたとき。


「波瑠さん」

不意に呼ばれて振り向く。


_____カシャ


サラダを作っていたはずの彼はスマホを構えていた。スマホの向こう側で優しく微笑む彼。


シャッターが切られたその音に驚いて反応が遅れる。


「な!?」


そのまま彼は何をいうでもなく料理に戻ってしまった。どきどきと鼓動が加速する。皿を落とさなかった私、えらい。