青い星を君に捧げる【零】

「たのしいー!!!!」

「そりぁー!!よかった!!」


思わず叫んでしまうと佑真も負けじと大きな声で繁華街の向こうまで続く街並みに届くように言った。


この瞬間、私は本郷家の娘でも、ハルでもなかった。ただの普通の女の子、リリィだった。


今まで知らなかった新しい世界を見せてくれる藤野佑真という男の子。私の狭い世界に足を踏み入れてきた人。


遠くへ向けていた視線を佑真に移すと同じく遠くを見ていたのであろう、優しい横顔がある。


私たちを乗せた自転車は坂を下り切ると、彼がハンドルをきったことによって右の道へ入った。


「ねえ波瑠さん。俺はね、言って無駄なことなんて1つもないと思いますよ」


____ 私が何を言っても無駄なの!!!普通に生きてきたあなたには分からないでしょうけど!!


すぐに佑真が言っていることが何を指しているのか理解出来た。

下り坂から幾分かスピードの落ちたはずの自転車だが、夜風が着ていた服を揺らし、私の頭上にあるクリーム色の細い髪をなびかせる。


「俺は白虎が好きだし、守りたいんです。あそこははぐれ者たちの居場所だから」


世間からは暴走族という括りで冷たい目で見られているが、白虎が情に厚く、一般人には手を出さないことは私でも知っている。