顔を上げると、もう会うことは無いであろうと思っていた人物が立っていた。


「こっちおいで。助けてあげる」


やあ、と手を軽く挙げている彼に目が奪われる。


____藤野佑真だった。



不意に声をかけられて緩んだ男の手から逃げるように私は佑真の傍に駆け寄った。


楽しそうに弧を描いた彼の口元。それに目を奪われていると、さっきの男性とは相反する優しい力で私の手首を掴んで引き、隣に来るよう促した。


「なあ、先に話しかけての俺たちなんだけど。返してくんね?」


佑真が1人でいることを良いことに、男性たちは大勢で喧嘩腰に話す。


佑真は白虎の総長だって言ってたから強いはずなのは分かっているんだけど大丈夫かな、なんて彼の横顔を盗み見た。


余裕ありげな、圧倒的強者のオーラを放つ彼は私を助けたあの夜とは全く違う男の子だった。


「嫌だ、って言ったらどうなるの?」


「……!!そりぁあ力づくだろ!!」


大勢の男性たちが殴りかかってくる。逃げようと佑真の袖を引っ張ったが、動く気配がない。


「ねえ、波瑠さん。助けてあげたら俺と2人でお喋りしないですか?俺、こう見えても……」


「もう!!!何でもするからあいつら倒して!!!」