「答え、何なんですか? もう回答権ないんですよね」
「あはは、うん。正解は、同じ大学の同じ学部の同級生でした」
「え!? 超普通!」
思わず声を上げると、彼はまた喉を鳴らした。いたずらっ子みたいな笑い方に、肩の力が抜ける。
「普通すぎて当たらないだろうなと思って、つい」
「……イジワルだぁ」
「ごめんごめん。これ、サービスするから許して」
そう言ってテーブルの上に置かれたのは、ガラスの器に入った生チョコレート。こんなので……釣られちゃうから、甘いものって罪だよなぁ。
「タイガさんって優しいですよねぇ。今のはイジワルだったけど」
「ん? どうしたの、唐突に」
「いやー、初めて来た時も思ったんですけど。人当たりいいっていうか。こんな職業してると、余計に女の子がほっとかなそうだなーって」
言い終えてから、ヘンな意味はないですよ、と付け加えておく。それから口に運んだ生チョコレートは、ほろ苦く口内の熱で溶けた。
「俺からすれば、真緒の方がよっぽど優しいけどなぁ」
「主任の方が? 嘘だぁ」
「ほんとほんと。俺、そんなにいいやつじゃないしね。俺からすればよっぽど真緒の方が優しいし、いい男だよ。
まぁ、あいつの場合は優しさが伝わりづらいのが玉に瑕だけど」
伝わりづらい。それに関しては、全身全霊で同感できる。主任が優しいってのも……悔しいけど、わかる。わかるからこそ、痛いのだ。
「……ねぇ、タイガさん」
「ん?」
「私ね、今日、純粋に飲みたくて来たの。1人でお酒飲みたくて、一番居心地がいいお店って思った時にここが浮かんで、来たの」
「うん」
「タイガさんは主任の友達だから、今日あったことは絶対に話さないでおこうって」
そう心に決めてお店の扉を叩いた。なのに、そんな覚悟は簡単に揺らいでしまう。言語化出来ていない感情に、自分の心がいっぱいいっぱいになっている。主任の友達に寄りかかるようなずるい女には、なりたくなかった。
「いいよ。今は俺、あいつの友達じゃなくて、ただのバーテンだから」
あまりに事もなげにタイガさんが言うもんだから、目の奥の、更に奥の方が、少しだけ熱くなる。彼は、友達に対する感情を曝け出す免罪符をくれたのだ。
口端からこぼれ落ちるように、言葉はぽつぽつと出た。今日起こったこと、ここに来る前、私が主任に対して言ったこと。タイガさんは相槌を返すのみで、ただ耳を傾けてくれた。
「私、間違ったことは言ってないって今も思うんです。自分の放った言葉に、責任は持てる」
「うん」
「けど……やっぱり、言わなくてもいいことだった。八つ当たりだったなぁって、後で気がついて」
「あはは、うん。正解は、同じ大学の同じ学部の同級生でした」
「え!? 超普通!」
思わず声を上げると、彼はまた喉を鳴らした。いたずらっ子みたいな笑い方に、肩の力が抜ける。
「普通すぎて当たらないだろうなと思って、つい」
「……イジワルだぁ」
「ごめんごめん。これ、サービスするから許して」
そう言ってテーブルの上に置かれたのは、ガラスの器に入った生チョコレート。こんなので……釣られちゃうから、甘いものって罪だよなぁ。
「タイガさんって優しいですよねぇ。今のはイジワルだったけど」
「ん? どうしたの、唐突に」
「いやー、初めて来た時も思ったんですけど。人当たりいいっていうか。こんな職業してると、余計に女の子がほっとかなそうだなーって」
言い終えてから、ヘンな意味はないですよ、と付け加えておく。それから口に運んだ生チョコレートは、ほろ苦く口内の熱で溶けた。
「俺からすれば、真緒の方がよっぽど優しいけどなぁ」
「主任の方が? 嘘だぁ」
「ほんとほんと。俺、そんなにいいやつじゃないしね。俺からすればよっぽど真緒の方が優しいし、いい男だよ。
まぁ、あいつの場合は優しさが伝わりづらいのが玉に瑕だけど」
伝わりづらい。それに関しては、全身全霊で同感できる。主任が優しいってのも……悔しいけど、わかる。わかるからこそ、痛いのだ。
「……ねぇ、タイガさん」
「ん?」
「私ね、今日、純粋に飲みたくて来たの。1人でお酒飲みたくて、一番居心地がいいお店って思った時にここが浮かんで、来たの」
「うん」
「タイガさんは主任の友達だから、今日あったことは絶対に話さないでおこうって」
そう心に決めてお店の扉を叩いた。なのに、そんな覚悟は簡単に揺らいでしまう。言語化出来ていない感情に、自分の心がいっぱいいっぱいになっている。主任の友達に寄りかかるようなずるい女には、なりたくなかった。
「いいよ。今は俺、あいつの友達じゃなくて、ただのバーテンだから」
あまりに事もなげにタイガさんが言うもんだから、目の奥の、更に奥の方が、少しだけ熱くなる。彼は、友達に対する感情を曝け出す免罪符をくれたのだ。
口端からこぼれ落ちるように、言葉はぽつぽつと出た。今日起こったこと、ここに来る前、私が主任に対して言ったこと。タイガさんは相槌を返すのみで、ただ耳を傾けてくれた。
「私、間違ったことは言ってないって今も思うんです。自分の放った言葉に、責任は持てる」
「うん」
「けど……やっぱり、言わなくてもいいことだった。八つ当たりだったなぁって、後で気がついて」



