苦い顔で主任が言うので、思わず笑ってしまった。
知ってるよ。ただの部下と結婚しちゃうくらいに一つの恋を大切にする人だってこと。
でも、今はその叶わなかった恋にすら感謝したい。いつか、自分の歪だった苦い恋にも感謝したい。
そして、今ある想いで最後にしたいと心から思うの。
「私達、2人まとめて予想外のバカップルかも」
「バカップルって言うより、バカ夫婦だな」
「うわ、なんかそれ一気に間抜けに聞こえるっ」
「バカップルも変わらんだろ」
それも確かに、と納得した私に主任が呆れたように笑う。
それから一呼吸置いて真剣な眼差しが向けられた。
「1週間、すげぇ長く感じたけどさ。勢いに任せるんじゃなく、ちゃんと話し合いたかったんだ」
私のとは違う骨太な指が私の左手に触れる。掌を伝って、薬指へと。
「これから、どんな夫婦になっていこうか?」
あまりに柔らかい空気をまとって主任が言うから、なんでかわからないけど胸がぎゅうってなって目の奥が熱くなった。
視界が滲むのを堪えられないけど、無理に我慢することもない。
いいんだこれで。私は、この人の前なら安心して涙を流せる。どんな不安も曝け出すことが出来るから。
思い描く理想はいっぱいあるよ。
寄りかかるんじゃなくて支え合える関係でいたい。喧嘩をしても話し合いを放棄しないでいたい。おじいちゃんおばあちゃんになっても仲良しでいたい。
スタートラインに立ったばかりの私達は、どんな姿にもなっていける。
夫婦としての正解を知らずに育ってきたからこそ、主任と2人で、ふたりなりの答えを見つけていきたい。
「一つずつ叶えていこう。小澤の──環の、理想像」
「あ……名前、」
「うん。今更だけど、もう小澤じゃないもんな」
そうだ。今まではカモフラージュする必要がある時だけ意識して呼んでいたけど、もうカモフラージュする必要もないんだ。
「真緒、さん」
「うん」
「改まって呼ぶの、何だかすごい緊張します……」
顔をぱたぱたと手で扇いで言うと、主任……真緒さんが口をきゅっと引き結んだ。
「それもやめてほしいとこだがな」
「それ?」
「敬語。俺はいつまで環の上司だ」
こつんと額を小突かれてハッとする。そうだ、これもカモフラージュ以外では使うのが当たり前すぎて気付かなかった。
少し拗ねたような真緒さんは私から視線を外して気難しい顔をしている。その様子を可愛いと思う私は、本当に彼のことが好きなんだなぁ。
「慣れるまで時間かかるかもだけど……」
「徐々にでいい」
「でも、それを言うなら私だって物申したいことが」
知ってるよ。ただの部下と結婚しちゃうくらいに一つの恋を大切にする人だってこと。
でも、今はその叶わなかった恋にすら感謝したい。いつか、自分の歪だった苦い恋にも感謝したい。
そして、今ある想いで最後にしたいと心から思うの。
「私達、2人まとめて予想外のバカップルかも」
「バカップルって言うより、バカ夫婦だな」
「うわ、なんかそれ一気に間抜けに聞こえるっ」
「バカップルも変わらんだろ」
それも確かに、と納得した私に主任が呆れたように笑う。
それから一呼吸置いて真剣な眼差しが向けられた。
「1週間、すげぇ長く感じたけどさ。勢いに任せるんじゃなく、ちゃんと話し合いたかったんだ」
私のとは違う骨太な指が私の左手に触れる。掌を伝って、薬指へと。
「これから、どんな夫婦になっていこうか?」
あまりに柔らかい空気をまとって主任が言うから、なんでかわからないけど胸がぎゅうってなって目の奥が熱くなった。
視界が滲むのを堪えられないけど、無理に我慢することもない。
いいんだこれで。私は、この人の前なら安心して涙を流せる。どんな不安も曝け出すことが出来るから。
思い描く理想はいっぱいあるよ。
寄りかかるんじゃなくて支え合える関係でいたい。喧嘩をしても話し合いを放棄しないでいたい。おじいちゃんおばあちゃんになっても仲良しでいたい。
スタートラインに立ったばかりの私達は、どんな姿にもなっていける。
夫婦としての正解を知らずに育ってきたからこそ、主任と2人で、ふたりなりの答えを見つけていきたい。
「一つずつ叶えていこう。小澤の──環の、理想像」
「あ……名前、」
「うん。今更だけど、もう小澤じゃないもんな」
そうだ。今まではカモフラージュする必要がある時だけ意識して呼んでいたけど、もうカモフラージュする必要もないんだ。
「真緒、さん」
「うん」
「改まって呼ぶの、何だかすごい緊張します……」
顔をぱたぱたと手で扇いで言うと、主任……真緒さんが口をきゅっと引き結んだ。
「それもやめてほしいとこだがな」
「それ?」
「敬語。俺はいつまで環の上司だ」
こつんと額を小突かれてハッとする。そうだ、これもカモフラージュ以外では使うのが当たり前すぎて気付かなかった。
少し拗ねたような真緒さんは私から視線を外して気難しい顔をしている。その様子を可愛いと思う私は、本当に彼のことが好きなんだなぁ。
「慣れるまで時間かかるかもだけど……」
「徐々にでいい」
「でも、それを言うなら私だって物申したいことが」



