手の届かないキミ



「…えっ」


 私は思わず声を出してしまった。


 だって、そこには。


 たった1人で、休憩スペースの椅子に座って、天井を見つめている彼がいたから。


 あれ、他の男子は?


 というか、なんで1人でいるの?


 次から次へと疑問が溢れてくる。


 …たくさん周りに男子がいたから、彼のことをこっそり見ることができたのに。


 こうやって1人でいたら、見ることなんてできない。


 …1人きりの彼の前を通るのは恥ずかしい。


 でも、次の授業に向かうにはここを絶対通らなければいけない。


 …早く通らなきゃ、授業に遅れる。


 私は心を決めて、休憩スペースの前を早足で通り過ぎようとした。


 彼の方なんて、少しも目をやらずに。