「ただいまー…」

家に入るともう誰もいない空間。

さっきまではたくさん人がいたのに、急に孤独になったようで、すこし恐怖を感じた。


でも、そんなことは気のせいだ。
もう僕は、何も恐れることなんてないんだから。

そう、一番恐れていたことが起こってしまったから…



「あ…もう、見えないな」

毎日、家に帰ると繰り返す、小さい君の香り。
君がいなくなってから2日。もう2日、まだ2日。なのに、君の香りは見えない。

その事実が、僕にこの現実を嫌というほど突きつけてくる。
もうこの部屋に、君はいないんだ。


「なーんて」

少しふざけたような、自嘲を混ぜたような声をこぼして、否定した。


君はいないんだから、こんなに考える必要はない。