兄の経営する、すぐ近所の自動車整備工場へ行くだけなのに、これほどドキドキするなんて。

姿見の前で、何度も何度も、全身チェックしている私。


「これ、皆さんに差し入れ持って行ってね」

母がクッキーを山ほど焼いて、それを私が持っていくだけの用なのに。

「今日、ヒロくん来てる日でしょ」

「えっ…それはどうか知らないけど!?」

あわてて母から顔を背けたけど、多分笑われているだろう…。

今日、ヒロくんがバイトに来ていることぐらい、当然知っている。