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「寂しそうね」
言われた言葉が一瞬理解できなくてきょとんとしてしまう。
「え?」
顔をあげれば小夜が弁当をつつきながら怪訝な顔をした。
「だから、奈津のことだってば。成臣さんがいなくて寂しそう」
「そうかな?」
「そうだよ。明らかに静か」
「私は小夜ちゃんと違っていつも静かよ」
「何ですって?」
「あはは、ごめんごめん。うん、でもそうね。寂しいかもしれない」
「あー羨ましい。私も寂しいとか言ってみたいわ」
「いつも近くにいた人がいないって、寂しいものなのね」
「愛してるのねぇ」
「えっ、いや、えっと」
「照れなくてもいいじゃない。だってそうでしょう?結婚していつも近くにいた両親と離れて暮らし始めたのに少しも寂しそうにしないで、成臣さんがたった数日いないだけでこの落ち込み様よ?」
「落ち込んではいないけど。なんか背中が寒いなぁって」
「は?何それ」
「いつも背中越しに感じていた成臣さんの体温が感じられなくて、寒くて寝不足なの」
「ちょっと奈津、それって惚気って言うのよ。自覚ある?」
「へっ?ち、ちがっ」
小夜に指摘されたとたん、カアアッと体温が上昇する。
「わ、私はただ単に寒いってことを言いたくて……」
「ああ、はいはい。わかったわかった。もう私はお腹いっぱいだわ」
奈津は困ったように反論するが、小夜はカラカラと笑いながら早く自分も結婚したいと思いを馳せた。



