エレベーターがくるのを待つのさえ惜しくて、5階からエントランスまで、階段を駆け下りた。
エントランスを抜け、マンションの敷地の外に出てやっと、わたしは大きく息を吐いた。
「……ぅっ……っ」
薄闇のなか、両膝に手をつき、肩で息をする。
(ダメ。こんなところで泣きたくない。あんな、裕一なんかの言葉で傷ついて泣いてるなんて)
そうやって、自分を必死で励ます。
何度も何度も深呼吸して、わたしは歩き出した。
公園を抜け、大きな明るい通りを避けて静かな住宅街を彷徨うように歩く。
どれくらい時間が経ったのだろう。
夜風に触れて歩くうち、暴風雨だった心の中が少しだけ、落ち着いてきた。
いつのまにか、一駅は歩いてしまったらしい。
(これから、どうしよう……)
このあたり、周りはオフィスビルや、ビジネスホテルのある界隈だ。
整ったビル群のなかに、見覚えのあるホテルチェーンの佇まいを見つけ、わたしは吸い込まれるようにそこへ向かった。



