上月くんは丁寧に説明してくれた。ぜんぜん違う伝えた方をしてしまったみたいな形で、なんだか申し訳なくなる。
「ああ、そうだったんですね。そちらが後輩だったんですか」
夫は納得いったように苦笑いした。
「彼女も、仕事先を探してたみたいなんですけどなかなか見つからなくてね。ご存じの通り、資格もなく、専門知識もないので……。今回は後輩に泣きついた形になったみたいで申し訳ない」
「いえ、決してそんなことはないですよ」
上月くんは穏やかに首を横に振ったが、夫はなおも続ける。
「いや、本当にご迷惑だったと思います。家事以外なにもできませんし、そもそも外で働くのに向いていないのに、はりきっちゃって、ほんとうにお世話をおかけしてしまって、お恥ずかしい限りです」
言いながら、裕一はわたしの肩をすっと掴んだ。
「なにかヘマをしたらガツンと言ってやってください。彼女も諦めがつ」
「莉子さんは」
上月くんは、凛とした声で夫を遮った。
「莉子さんは、スタッフとしてとても優秀です。ですがそれ以上に、人間として素敵な方です。僕は高校の時から先輩としても、人としても、尊敬していました」



