フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました

言ってから、とても後悔した。離婚した彼に、すごくイジワルなことを言ってしまった。わたしはハッとして俯く。

「ごめん。今のなし」

隣で歩く彼は、しばらくわたしを見下ろしていた。

「……夕飯の支度や、後片付けを彼女だけに求めたことなんてないよ。二人でするのが当然だろ。その家に暮らしているのは自分たちなんだから」
「……」
「でも、僕もごめん。……今のなし」

夕方の穏やかな喧騒のなか、わたしたちは無言で歩いた。

わたしは、帰ってから取り込んで畳む予定のベランダの洗濯物と、なくなりかけのお風呂の洗剤のことを思い浮かべた。
上月くんがなにを思っていたかはわからない。

ただ、二人で黙って歩いた。

少し静かな通りに差し掛かったところに、有名なカフェチェーンがある。待ち合わせや勉強、仕事などさまざまな目的で訪れるひとの多い、皆に馴染みのカフェだ。

わたしたちの少し前で、その扉が開きスーツの男性が大股で出てきた。携帯を片手に急いだ様子でこちらに向かってくる。

「……裕一?」