フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました



「お腹いっぱい……!おやつのつもりが、めちゃくちゃ食べた気がする……」
「気持ちいいくらい良い食べっぷりでしたよ。蔭山さん、メニューの感想もしっかり言ってくれて、これなら黒田くんも満足するレポートになりそうですね」
「そ、うですか? 美味しいと、おしゃれで可愛い! しか言ってない気がするんですが……」
 オーナーは、はは、と笑う。
「確かに。でも、その素直な感想がすごく参考になりましたよ。今日は、お忙しいのに付き合っていただいてありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、ご馳走になってしまって……!ほんとうにありがとうございました。夕ごはんの代わりになりそうです」

わたしは冗談めかしながら、頭を下げた。お仕事の一環だから料金はいらないと言われても、やはり気が引けてしまうが、気になっていたカフェで、人気のメニューを食べられたのはとても楽しい時間だった。

五時近くなって駅前の通りは、夕飯の買い物の人や学校帰りの子たちがちらほらと見られた。そのなかを、駅に向かって少しのんびりと歩く。
上月くんも、ゆっくりとわたしについてきてくれていた。駅まで送ってくれるらしい。夕ごはんの支度、という言葉に、彼は少し驚いた表情になる。

「なんだか新鮮ですね。先輩がそういう時、奥さんの顔になってる」