フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました



ちらりと目をあげて睨まれる。さっきのお返しとばかりに、

「どうだろうね。そうかもしれませんね。オーナー」
と笑ってやった。
「まぁでも、上月くんは実際めちゃくちゃモテそう……」
この年で、バツイチで、こんなにイケメンで好人物なのだ。誰も放っておかないだろう。思わず本音がこぼれる。
「そんなことないですよ」

彼は余裕で笑ってやり過ごす。今まで何度もこういう言葉を言われてきたひとのあしらい方だ。

「……くだらないですよ。そんなの。一人の人に大切に想われるほうがよっぽど幸せだと思うけど。先輩は違うの?」
一瞬、刺すような視線を向けられる。
「えっ……。そ、それはそうかもしれないけど」
「僕が聞きたいのは、先輩は一人の人に、旦那さんに、大切に愛されてるんでしょ?ってことです」

『先輩、いま、しあわせ?』

また、この言葉だ。
このひとは、どうして、これを聞いてくるのだろう。
そしてわたしはなんで、すんなり頷けないんだろう。

また、気まずい雰囲気になりかけたところに、わたしが注文したマフィンとプリンのセットが運ばれてきた。
わたしは、可愛い!美味しい!といつもより高いテンションで写真を撮りながらまた、この質問をやり過ごしたのだった。