「蔭山さん、今日の髪型、かわいい。美容院の雑誌で見たのとそっくりよ。ゆるふわっていうのかな、蔭山さんの雰囲気にぴったり」

 待ち合わせ場所で顔を合わせた途端、吉野さんはゆったりとした口調でわたしのことを褒めてくれた。三つ上
の彼女はパートでも面倒見が良く、わたしもたくさんお世話になって、今では友達のように感じている。
「吉野さんこそ、いつもまっすぐでサラサラのスタイル、羨ましいです。わたしは癖毛で……」
「えー。そこがいいのに。もっと自信持たなくちゃ、ね」

 彼女はにこりと笑う。昨日の裕一の言葉で沈みがちだった気持ちがふわりと明るくなり、私も笑顔になった。
ガラス窓から昼間の光が優しく入り込む店内は、昔のガス燈を模したレトロモダンな空間で、テーブルはいっぱいなのに、そんなに騒がしくない。とても話しやすい店だった。

 茹でたての生パスタに、真っ赤なトマトソースが濃厚に絡んでツヤツヤに輝いている。上にのっかったバジルの葉がみずみずしい。