フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました



「改心は元からしてましたよ。部活ちゃんとやりたかったし。あの人らから抜けるタイミングが見つからなかっただけです。……でも、やっぱりセンパイのおかげですね」
「あれから見違えて真面目になって……先生たちも驚いてたもんね」

 周囲とだんだん馴染むようになっていく彼を見ているのは楽しかった。上月くんは、その中でも『恩人』だったわたしになぜかよく懐いてくれて、ことあるごとにセンパイ、先輩と寄ってきてくれたのだ。

彼への恋心を自覚していたわたしは、それを悟られないように振る舞うのが精いっぱいだったけれど、やっぱり慕ってくれるのは、先輩としても本当に嬉しかった。帰りの駅が一緒で、家も近いことがわかって、何度も一緒に帰った。彼はわたしに、

「前は、助けられるとかいう男としてすごく情けないコトになったので、これからはいつでもセンパイを守ります」

と冗談まじりに宣言して、帰り道は送ってくれたのだ。それは、なぜか部活を引退してからも、卒業近くまで続いた。

「部活終わったら、ハイ終わりなんてないすよ。そんなの。まだ、守るよーなことも起きてないし」

まだ茶髪で、ゆるい制服の着こなしのまま、彼は隣でそう言った。真っ赤になるほっぺたを隠すようにわたしは、マフラーに顔を埋めたのだ。

(こんなの、勘違いするに決まってるじゃん)