フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました


「だから、ケーサツがいっぱいきて、上月くん探してるの! 万引きしたの君たちでしよ??」
「ち、ちが…!」

支離滅裂なのはわかっている。彼らが少しでも後ろ暗いところがあれば、警官と知り合いになどなりたくないはずだ。
「ほら、もう、そこ……っ」
何もない空間を指差す。わたしは上月くんの腕をぐいぐいとひっぱり彼らから引き離した。
ちょうどそのとき運良くパトカーが通ったのだ。夕方のパトロールらしく、ゆっくり静かに走行中のようで、私たちに目もくれない。
それでも、ヤンキー集団を刺激するには十分だった。

彼らはずりずりと後ずさりしながらやがて蜘蛛の子を散らすようにいなくなっていった。パトカーは引き攣った表情のわたしと呆気に取られた様子の上月くんの横をのんびりと通りすぎていった。

「よ、よ、よ、かったぁぁぁ……っ。びっくりした…」

わたしはその場へなへなと崩れ落ちた。こんな大ウソついて、バチが当たらないだろうか。
でも、でもとりあえず、拉致とかリンチとかいう恐ろしいことは回避できた。

「あ、朝比奈先輩……? な、なんすかいまの」