一人が彼の肩を掴んだ。三、四人で囲みどこかへ連れて行こうとしている。ただならぬ雰囲気に、高校二年のわたしはパニックになってしまった。
(ど、ど、どうしよどうしよ……っ。上月くんが連れてかれちゃう…!)
誘拐、拉致、リンチ……。などなど不吉な言葉が頭を駆け巡り、足が震えてくる。今思えばだいぶ飛躍した考えなのだけど、ふだんそういうことに縁がないだけに、わたしは何が何やらわからなくなっていたのだ。
背中がなぜか熱くなって、気がつくと大声を出していた。
「こ、こ、っ、上月くんっっ!!」
皆が一斉に振り向く。恐ろしさに震え上がりながらも、わたしは早口でまくしたてた。
「さっき、あっちのお店で集団万引きあったんだって!
警察がいっぱい来てるよ! 上月くん見つかっちゃうよ?早く逃げよ!」
「え?」
「は?」
「何言ってんのこのオンナ」



