「もう行かないって言ったじゃないすか。アンタらとつるむの辞めるんで」
ぶっきらぼうなその言い方に聞き覚えがある。そろそろと振り向くと、そこには赤茶に近い色の髪をした上月くんがいた。数日部活に現れていなかったので、今日もサックスパートのリーダー先輩が苛々としていたのを思い出した。
(上月くん。サボって遊んでるんだ……っ。あんな悪そうな人たちと一緒で)
見るからにヤンキー少年ぽいグループが彼を囲んでいる。わたしは思わず眉を顰めたが、なにか違う雰囲気にもうすこし近づいてみることにした。
上月くんの周りは皆チャラチャラとゆるい私服だったけれど、彼だけは制服を着ていた。そして、革の大きなケースを抱えている。あれは楽器のケースだ。
(部活、くるつもりだったのかな……)
「イヤイヤまじでさ、オレら一生トモダチでしょ。離れるとか、抜けるとか、そーゆーのないの、わかる?」
一人かぐいっと顔を近づける。上月くんは心底嫌そうに顔を背け、歩き出そうとしていた。
「勝手にやってろよ。俺は忙しいんだ」
「オイ。待てよ」



