高二の夏休み、わたしの入っていた吹奏楽部はコンクールに向けて毎日毎日学校で練習づけだった。合宿もしたし、基礎練といって体力作りのランニングもやっていた。文化部なのにみんな日焼けして、それなりにがんばっていた。
一年生は入部して初めての夏休み、この部活はこんなにも遊べないところか、と絶望感にさらされていただろう。わたしたちもそうだったから。それでも少しずつ順応して、うちの部は熱心だから、って納得する様にしていた。
上月くんは入ってきた時からわりと反抗的だった。うちの部は女子はともかく男子はわりと地味な見た目の子が多かったけれど、上月くんはどこか違っていた。髪の毛も校則ギリギリの茶色だったし、明らかにピアスの痕があった。
制服も緩く着崩していて、高一とは思えない堂々とした(えらそうな)態度で、よくケンカもしていたという噂があったのだ。
そんな、いわゆる不良というか、ヤンキー少年だったのに、なぜうちのブラスバンドのような文化熱血部に入ってきたのか、周りは全員首を傾げていた。
「内申のためでしょどうせ」
「なんか、家めっちゃお金持ちらしいよ、だから親に言われたんじゃない?」
などなど、入部したての春には三年生がそんなふうに囁いていたし、わたしたち二年生も、なんだか厄介な子が入ってきたなと思ったくらいだった。
それでも、
「サックス好きなんで、入部しました」



