フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました

 
 振り返った先には、夕陽を受けて立つ背の高いシルエット。逆光で眩しくてよく見えない。わたしは額に手を翳した。

清潔感のある少し長めの前髪に、男らしい輪郭。昔はもっとあどけなくて、もっと挑戦的だった切長の瞳はいま、落ち着いた大人の男性の眼差しに成長していた。

上月(こうづき)……くん」

あの頃、制服を着崩していた彼の姿を見るたびに心躍らせていた。今の彼はオーバーサイズの上質なリネンのシャツを濃いパンツにゆったりとタックインさせて、まるでさっきまでどこかの雑誌の『今どきの着こなし特集』の撮影でもしていたかのようだ。

もともと高身長に長い脚、小さな顔というイケメン素質抜群だったのだが、時を経て青臭さは消え、穏やかで知的になった男性がそこにいた。

「センパイ……! やっぱり。朝比奈センパイだった!お久しぶりです」

わたしが彼の名を呼ぶと、上月くんはとたんにくしゃりと笑顔になる。二十年近い時が一気に逆戻りして、あの頃の無邪気な後輩くんの顔になったのだ。