「俺……実は柿川さんに言ってないことがあるんだ」
「言ってない、こと……?」
それは、なんなのだろう……?
「俺……実は、バツイチなんだ」
「……え?」
バツイチ……? もしかして冬馬さん、結婚してたの……?
「離婚したのは二年前で、子供はいない。……離婚した原因は、子供が出来なかったこと」
子供が、出来なかった……。それが冬馬さんが離婚した理由……。
「だから離婚した時、俺決めたんだ」
「……決めたって、何をですか?」
そう聞くことも、怖いとさえ思うのは……。
「……もう、誰とも付き合わないって」
私がこの人のことを、本気で好きだからかもしれない……。
「そう……ですか」
「柿川さんの気持ちは、本当に嬉しい。……本当に嬉しいよ」
それでも私は……。
「……私、あなたのことを諦めたくないです」
「柿川さん……」
あなたを諦めるなんて、したくない。
「ごめんなさい、でも……。私はやっぱり、あなたが好きなんです」
「……分かってる?柿川さん。俺は君よりも十歳も年上なんだよ? こんなおじさん、君には似合わないよ」
冬馬さんのその言葉が妙に気になってしまう。



