「翔くんには・・・朱莉さんがいる。なのに今更私がノコノコ会いに行ったら、迷惑かけるだけじゃない。」


「やっぱりそんなこと気にしてたんだ?」


未来の言葉を聞いて、ため息交じりに言う恵。


「そんなことって・・・。」


「だってそんなの今更じゃない。だってそうでしょ?未来は高城と朱莉さんの前に、1度現れちゃってるんだから。そして、この病院に勤めてることも2人に知られてる。」


「恵・・・。」


「私は未来が、高城にずっと会いに行かないでいることに納得してなかった。それでも、もう2度と彼の前に姿を現さないと決めてるなら仕方がないと思ってた。だけど、どんな理由にしろ、ついにこの間、あんたは高城に会いに行った、自分の意思でね。だとしたら、キチンと彼に全てを話すべきだよ。それをしないなんて、未来ははっきり言って不誠実だよ。今の高城に恋人がいるとかいないとか、そんなの別問題じゃない。」


「・・・。」


「たぶんだけどさ、高城は今でも未来のことが好きだと思うよ。」


「えっ?」


「ここ何日かだけどさ、高城と朱莉さんを見てると、なんか違和感があるんだよね。この2人本当にカレカノなのかな?って。なんか昔の未来と高城の方がよっぽど・・・。」


「そんなわけないよ。だって翔くんは・・・。」


慌てたように言う未来に


「だからさ、それも含めて、キチンと話さなきゃ。とにかく未来は高城からもう逃げちゃダメなんだよ。」


言い聞かせるように、恵は言うと、じっと未来を見つめた。少し経ってコクンと1つ頷いた未来に


「よし。じゃ早速、高城の所に行くよ。」


そう言った恵が手を引こうとすると


「ちょっと待って、恵。いくら何でも今からは・・・だって朱莉さん、今いるんでしょ?だったら彼女に嫌な思いはさせられないよ。」


懸命に頭を振る未来。そんな彼女の姿に、1つ息を吐いた恵。


「わかった。でも未来、これだけは教えとくね。高城、そんなに長くここに居ないから。」


「えっ?」


「経過観察期間が終了したら、伊東のリハビリ分院に転院する予定なの。黒部先生の判断でね。だから、いつまでもグズグズしてる暇はないからね。じゃ、私、もうちょっとやることがあるから。お疲れ。」


そう言い残すと、恵は病院に戻って行く。


「恵・・・。」


その後ろ姿を、未来はじっと見つめていた。