翌日、バスでホテルを出た代表チ-ムは明後日の試合会場でもあるさいたまスタジアムで、全体練習に臨んだ。エース-ストライカ-万国共通の背番号である9を付けた翔平がグラウンドに姿を現すと、取材陣のフラッシュが一斉に彼に向けられる。その方向に一礼した翔平は、そのまま軽やかな足取りで、グラウンドを走り出す。


「足の不安は本当にないみたいだな。」


その姿を見て、報道陣から声が上がる。背番号9が合流したチ-ムは明らかに士気が上がっていた。マスコミ向けのウォームアップや軽い全体練習をこなした後は、彼らをシャットアウトしての本格的な練習がスタ-トする。


次の試合に向けての様々なフォーメ-ションが監督、コーチから示され、選手達がそれを受けて動いて行く。翔平もしばらくケガで満足に動けなかったウップンを晴らすかのように、グラウンドを駆け回った。


「おい翔平、張り切るのはいいが、オーバ-ワ-クにならないようにな。本番はあくまで明後日なんだからな。」


キャプテンの長谷が、冗談交じりの口調でブレ-キを掛けるが


「わかってますよ。でも久しぶりにみんなと一緒に出来て、嬉しくてしょうがないんですよ。少し多めに見て下さい。」


翔平は笑顔で答えると、長谷から離れて行く。


「アイツ・・・。」


苦笑いでその姿を見送った長谷だが


(当たり前だが、やっぱり翔平クラスになれば、本番に向けて、きちんと仕上げて来る。なんの心配もないな。)


そう思いながら、練習に戻って行く。それは他の選手も、見守る監督、コーチたちも同じように感じていた。そして2日間の練習スケジュ-ルを順調にこなしたチ-ムに手応えを感じた松前監督は試合前の最後の記者会見に臨み


「必ず勝てるなどと自惚れるつもりはないが、代表チ-ムの監督をお引き受けした時点で、W杯のアジア予選を突破出来ないなどということは、あってはいけないことだと思っている。そしてチ-ムがそこまで仕上がったと確信している。明日の試合は全力を尽くし、そして勝ちます。」


と自信を示した。そして選手を代表して長谷と共に会見に呼ばれた翔平は


「自分の出遅れでチ-ムに迷惑を掛けてしまいましたが、もう自分もチ-ムも万全です。明日の試合が楽しみです。」


笑顔で記者団に告げながら


(明日は必ず勝つ。)


心の中で改めて考えていた。