年が明けて、すぐに受験がやって来て、仲間達の進路が決まって行き、やがて翔平たちが中学を卒業する日がやって来た。


「高城先輩、制服の第二ボタン下さい。お願いします!」


全ての行事が終わり、校庭に現れた翔平を数人の後輩女子が取り囲むと、そんなことを言い出され、キョトンとした表情になった彼はすぐに


「こんなもの欲しいのか?じゃ、じゃんけんで決めて・・・。」


などと言いながら、ボタンを取り外そうとするから


「ちょっと待てぃ~!」


と恵が慌てて飛んで来た。


「ちょ、ちょっと高城、あんた何考えてるの?」


「いや、ボタンくれって言うから・・・。」


「あのね、それがどういう意味か、まさかあんた知らないの?」


「なんか意味があるの?」


真顔で聞き返してくる翔平とそれに同調するように頷く周囲の男子連を見て、思わずため息を吐く恵。


「とにかくあんた、そんなことしたら、あとで未来に引っ叩かれるからね。あなた達もそのボタンはもう行き先決定済だから、諦めてね。」


そう言って、女子たちを追い払う恵に


「本多、可哀想じゃん。」


と尚も呑気なことを言っている翔平。これには


「ああ、煩い。未来の為だと思って頑張って来たけど、あんたみたいな唐変木のお守りからやっと解放されるかと思うと、清々するわ。じゃぁね!」


(確かにあんまり聞かなくなったとは思うけど、第二ボタンの意味も知らないなんて・・・。恋愛に疎いのにも程があるよ。そのくせ、サッカ-上手いから妙にもてるし・・・。未来、これから苦労するかもな・・・。)


呆れ半分、怒り半分の思いを抱きながら、恵は足早に翔平から離れて行った。


その日の夜、未来からLINEが入っていた。


『翔くん、卒業おめでとう。私は明日が卒業式です、ちょっと緊張してるけど楽しみです。じゃ、おやすみなさい。』


なんか素気ないなと思いながらも、明日に備えて、早く休むのだろうと考えた翔平は、簡単な返信をして済ませた。