「俺たち、離れ離れになるんだぞ。ましてや高校に入れば練習はますます厳しくなるから、お前に会いに行くことも難しくなるから、俺たち滅多に会えなくなるんだぞ。未来はそれでいいのかよ?」


未来の言葉を遮って、翔平は詰め寄るように言う。


「うん。」


それに対して、未来はコクンと1つ頷く。その彼女の仕種に、翔平は息を呑む。


「翔くんと会えなくなるのは寂しい、とっても寂しいよ。でも、私は前向きな気持ちで転院するんだよ。」


「・・・。」


「私は翔くんや恵といろんな時間を共に過ごせるようになりたい。翔くんとずっと一緒に居られるようになりたいの。その為に転院するんだよ。だから、翔くんと一時的に離れなきゃならないんだよ。寂しいし、辛いけど、そうしよう、そうしたいって私は決心したの。翔くんのお陰でその勇気が出たんだよ。」


「未来・・・。」


「私、必ず元気になって見せるから。だから、翔くんも自分の夢を実現するために、全力で頑張って。元気になった私が、全力であなたに声援を送ることが出来るように。」


そう言うと、未来はニコリと翔平に微笑んだ。その笑顔に、思わず見とれてしまった翔平は、ハッと我に返ると


「未来、お前強いな。」


と感に堪えない口調で言った。


「翔くんが・・・強くしてくれたんだよ。」


優しい口調で答えた未来に


「よし、わかった。俺、負けねぇからな。」


決意のこもった声で翔平は言う。


「私も。」


そう言って、見つめ合った2人は、やがて笑顔になった。


全ての準備が整い、未来がさいたまを去ったのは、それから半月後のことだった。最後の挨拶に登校することも叶わず、去って行く未来を翔平や恵たち、親しいクラスメイト数名が病院で彼女を見送った。


「未来、向こうに行っても連絡ちょうだいね。私もするからさ。」


「うん、ありがとう。やっとスマホも買ってもらえることになったから、毎日LINEしようね。」


涙ながらに言う恵に、笑顔で答えた未来は


「翔くん、いろいろありがとう。じゃ、またね。」


「ああ。とりあえず落ち着いたら、顔出すから。」


「ありがとう、でも無理しないでね。」


「わかってる。」


そして、車に乗り込んだ未来は、笑顔で手を振ると、走り去って行った。


「未来、本当に行っちゃったね。」


「ああ。だけど、これでアイツに会えなくなるわけじゃないから。」


「そう、だよね・・・。」


確認するように言う恵に、翔平は1つ大きく頷いた。