年が明け、三学期は瞬く間に過ぎ、翔平と未来は2年生に進級した。


いつものように翔平と共に校門を潜った未来に


「未来!」


そう声を掛けて、駆け寄って来たのは恵だった。


「恵。」


「クラス、また一緒だったよ。」


そう言って、ニッコリ微笑んだ恵に


「本当?よかった~。」


未来はホッとしたように、そして嬉しそうに笑顔を浮かべる。


「そして、ついでに教えて上げるけど、高城も一緒だから。」


という恵の言葉に


「えっ、ホントに?」


「やったぞ未来。これからはもっと一緒にいられるぞ。」


「うん。翔くん、よろしくね。」


「ああ。」


手を取り合わんばかりに喜ぶ2人に


「2人の世界に浸ってらっしゃるところ、すみませんけど、私にも何か言う事ないの?高城。」


割り込む恵。


「別に本多はどうでもいいんだけど、俺にとっては。」


憎まれ口を叩く翔平に


「翔くん、そんなこと言わないで。恵は私にとって大切な親友なんだから、仲良くしてくれないと困る。」


未来が釘を刺す。


「そうだそうだ。私を大切にしないと、未来に嫌われちゃうぞ、高城。」


「うっせぇ!」


やり合っている2人をニコニコして見つめながら


(楽しい2年生生活になりそうだな。)


未来は心、弾ませていた。そしてそんな娘を見て


(翔平くんと出会って、未来は見違えるように元気になった。本当によかった・・・。)


母の景子は喜んでいた。体育祭、定期試験といった学校行事も、欠席することなく、1学期を完走した未来。これでほぼ1年、入院とは無縁となったわけで、こんなことは病気が発覚してからは、初めてのことだった。


夏休みに入っても、クラスや部活の友人たちと遊びに行ったりして、普通の中学生としての生活を過ごす未来。そしてもちろん、サッカ-の練習に励む翔平の応援にも熱心に通っていた。


「翔く~ん。」


手を振って声援を送って来る未来に、翔平は満面の笑顔で応えるが、ハッとしたように彼女に駆け寄ると


「未来、もっと日陰にいなきゃダメじゃないか。」


焦ったように言う。


「だって、あそこだと、翔くんのこと、よく見えないんだもん。」


「ダメだ。去年、病院の屋上で暑さにやられて、体調崩したのを忘れたのか。」


「ハ~イ。」


叱られて、不満そうに少し頬を膨らませて、でも未来が日陰に移動したのを見て、安心したようにチ-ムに戻ると、途端にみんなに冷やかされ、翔平は


「うるさいな!」


と照れ隠しに大きな声を出し、その様子を未来はニコニコしながら見ていた。