こうして通学を再開した未来。クラスでは恵が彼女を気遣い、そしてクラスの輪に溶け込めるように気を配った。


そしてクラスの外では翔平が陰に陽に未来を支えた。部活の忙しい彼は、なかなか下校を共にすることは出来なかったが、登校は必ず一緒だったし、欠席が続いて、勉強が遅れがちの彼女の為に、週に1~2回は彼女の自宅で一緒に勉強したりもした。


「あの子が自分から勉強するなんて、信じられません。未来ちゃんのお陰です。」


今度は翔平の母親が感謝する番だった。退院後の未来の症状は安定していた。ほとんど学校も休むことなく通い、本来は明るい未来は恵を通じて、クラスメイトたちとの距離を縮めて行った。


「本多に頼んでよかった。未来があんなに楽しそうに学校に通えるようになったのはお前のお陰だ、ありがとうな。」


ある日、翔平がそう言って、恵に感謝すると


「ううん。あの時、高城に声を掛けてもらわなかったら、私、未来があんないい子だって、未だに気が付けてなかったかもしれない。だから私の方こそ、あんたに感謝だよ。」


恵の方も、そう言って笑顔を見せる。


「これからも未来のこと頼むな。」


「なに、あんた。もうすっかり未来の彼氏気取りじゃない。」


「バカ、そんなんじゃねぇよ。」


恵にからかわれて、翔平は慌てて首を振る。が、肩を並べて登校する日々。それだけではなく、学校でも事あるごとに一緒に行動する2人。その仲睦まじさは当然、周囲の目を引いた。


「ねぇ、君たちってカレカノ?」


遠慮会釈なく聞かれて、翔平は


「だから、そんなんじゃねぇって。俺たち、夏休みに病院で知り合ってさ。気が合ったんだけど、実は同じ学校だったんでとにかく嬉しいんだよ。な、未来。」


「う、うん・・・。」


あっけらかんと言い、未来は顔を赤らめながら頷く。


(えっ、まだ否定するんだ・・・。)


横で見ていた恵は内心呆れたが、中学生になって半年あまりの2人には「カレカノ」という言葉にまだ、現実味を感じられなかったのだろう。が周囲にとっては、2人はどう見てもカップルそのものだった。


その恵に付き添われて、未来は11月の翔平の試合の応援に行った。寒くなる時期で、両親は未来の体調を不安視したが、無理はしないという約束で出掛けたのだ。


未来の姿を見て、翔平が張り切らないはずがなかった。グラウンドを縦横無尽に駆け回る彼に、未来は大きな声援を送る。それは、傍らの恵が心配になるくらいの勢いだった。そしてその声援に応えて、ゴールを決めた翔平が


「未来!」


彼女に向けて、なにやらポーズを決める。


(うわぁ。なにカッコ付けちゃってるの?)


と恵は引いたが、未来は


「翔く~ん、ナイスシュ-ト!」


と大きく手を振って応えている。


(なに、このバカップル・・・。)


恵はそんな2人を、微笑ましさ半分、呆れ半分で見ていた。