休憩が終わった後は、病室の見回りや患者の記録のパソコンへの入力などをしているうちに、時計の針が午前0時を指し、交代で仮眠を取る時間となる。


夜も更けて来て、病棟内はいよいよ静けさを増して来るが、巡視やケアは欠かせないし、急患が運び込まれてくれば、その空気は一変することになる。だがこの夜は幸いなことに、そのようなことはなく、大きなトラブルもないまま、外は徐々に白み始めて来た。


交代で朝食を摂っている間に6時になり、起床タイム。病院の朝は早い、朝の挨拶や検温を行っている間に、すぐに患者の朝食タイムがやって来る。やがて日勤者が出勤してきて、朝礼、引継ぎを経て、勤務を終え、未来が同僚と病院を出た時には10時近くになっていた。


最寄り駅までバスで行き、駅前のファーストフード店でちょっと早めの昼食、未来の感覚的には実は夕食を摂り


「じゃ、お互いしっかり応援しようね。」


「はい。」


挨拶を交わして、家路についた未来が自宅に戻ると


「お帰り。」


「ただいま。」


出迎えてくれた母景子(けいこ)に答えて家に入った未来は、着換えたり、シャワ-を浴びたりしているうちに、時刻はもう正午に近い時間になっていた。


(疲れたな・・・。)


毎度のこととは言え、夜勤の疲れ方は日勤とは全然違う。人間の身体はやはり夜寝て、昼間活動するように出来ていることを実感する。


「じゃお母さん、休ませてもらうね。大丈夫だと思うけど、万一寝過ごしそうになったら必ず起こしてね。」


「はいはい。」


母に念を押すと未来はベッドに入った。身体を横たえ、目を瞑ると耳に入って来る音が。


(雨・・・?)


確かに曇っていたが、どうやら降って来たらしい。スマホで改めて予報を確認すると、今日はこれから夜まで雨のようだ。


(せっかくの試合なのに・・・でもこればかりは仕方ないよね・・・。)


野球と違い、サッカ-はよほどの荒天にでもならない限り、中止になることはない。


(出来れば止んでくれればいいけど・・・。)


そんなことを考えているうちに未来は眠りに落ちて行った。


同じころ、ホテルの窓から翔平は、外の様子を眺めて来た。


(とうとう降って来やがったか、なんとかいいコンディションでやりたかったが・・・。)


翔平は雨が好きではなかった。屋外スポ-ツのプレイヤ-としては、雨は全く歓迎する理由がない。実はケガをした前回の試合も雨だった。


(ま、仕方ねぇな・・・)


出発の時間となり、カ-テンを閉めた翔平は部屋を後にした。