犬猿☆ラブコンフリクト

二海side



文化祭の出し物を決める時、俺と辻本が劇の主役に選ばれた。



その時は、辻本と一緒ならと思って賛成したんだけど・・・。



台本に書かれていたセリフは俺にとっては恥ずかしいものだった。



どう考えても、好きな奴相手に言えるようなセリフじゃねぇ。



少し後悔しながら読み合わせをしていく。



だけど、辻本のセリフを聞くと、辻本自身が告白してるんじゃねぇのか、なんて考えちまってドキドキと胸が高鳴る。



そんな状態で辻本を見つめてセリフを言うなんて、俺には難易度が高かった。



「あ゛ー・・・」



頭をガシガシとかきながら、体育館に向かって歩く。



軽率に引き受けるんじゃなかった・・・そんなことを思いながら、さっきの読み合わせの時の辻本を思い出す。



真っ直ぐに俺の事を見ながら、照れることなくセリフを言い切っていた。



クソ・・・こんなことも目を見て言えねぇのかよ、ダッセェな・・・俺。



「ずいぶん苦戦してるみたいね、二海くん」



「・・・三島」



考え事をしていると、後ろから来た三島に声をかけられる。



「・・・別に苦戦なんて──」




「どうせ、茉弘相手にあのセリフを言うのが恥ずかしいんでしょ?この意気地なし」



げ・・・図星ついてきやがった・・・。



それにしても三島の奴・・・俺に告白してきてから態度が180度変わってねぇか?



「・・・好きなやつにあんなセリフ言うとか、恥ずかしいに決まってんだろ」



「そんなこと言ってるから、告白しても“忘れろ”の一言でなかったことにされてんのよ」



キツい一言を喰らい、ぐうの音も出ない。



けど、恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ。



あの時は勢い任せに言っちまったし、冷静な状態で告白まがいなことしろって言われたら平常心ではいられねぇだろ。



「覚悟決めて言うしかないんじゃない?意気地なしにできるかは別だけど」



「別に意気地なしじゃ──・・・!!」



「そんなあなたに朗報。・・・あの子、バカなりにアンタの事考えてるみたいだから、もう少し待ってたらいいことあるかもね」



三島の言葉に、俺は動きを止めた。



アイツが・・・俺の事を考えてる・・・?



どういうことだ?



「じゃ、そういう事だから。主役、頑張んなさいよ」



そう言って、立ち止まった俺を追い抜いて体育館の中へと入る三島。



その姿を呆然と見ることしか出来なかった。