翌日、新チームになってから初めての合宿の日。



私は体調が最悪になってしまっていた。



本当、月1で具合悪くなるの勘弁して欲しい。



そう思いながら荷物を運ぶ。



視界がグルグルと回るような感覚があり、気持ちが悪い。



お腹も痛いし腰も痛い・・・最悪の状態だ。



フラつきながら荷物を運んでいると目の前に二海が来るのが見えた。



「二海・・・?なに?今──」



「お前みたいなやつにこんな精密機器持たせてたんじゃ粉々になりそうだな」



いつものような口調で声をかけてくる二海。



だけど、私にはその言葉に対して反抗する気力はなかった。



「・・・今、そんな余裕──」



「ねぇんだろ。貸せよ、俺が運ぶ」



「あ。・・・ありがとう・・・」



そう言って私の持っていた荷物を奪い取る二海。



「あと、ベンチで休んどけ。残りの仕事は俺がやっとく」



「え、いや、いいよ。仮にも二海、選手なんだから練習しなよ」



「そんな真っ青な顔されて動かれてもメーワクだっつーの。・・・茂木さんも心配してソワソワしてるし」



そう言って茂木先輩がいる方を見る二海。



休みだからと顔を出していた茂木先輩が心配そうにこちらを見ていた。



「ほら、ベンチで休んでこい。・・・あと、これ、かけとけ。体、冷やすなよ」



そう言って私の頭に何かをかける。



何かと思ったら二海のジャージの上着だった。



頭からかけられたジャージから柔軟剤のいい匂いがしてくる。



「っ──・・・あ、ありがと・・・」



「おぅ」



頬が熱くなっていく感覚に襲われ、うつむくと、短く返事をして荷物を運んでくれる二海。



「・・・今のは・・・ずるい・・・」



頭にかけられた上着を手に取り、それで顔を隠す。



そんなあからさまに優しくするのはずるいよ。



そんなことを思いながら、ゆっくりとベンチに行き腰掛ける。



肩から二海に借りた上着をかけて荷物を運んでくれている二海を見る。



嫌そうな顔ひとつせず、運んでくれている横顔を見て胸がキュンとする。



「・・・具合悪くても、見つめる余裕はあるみたいね、茉弘」



「!ゆ、由紀!?」



二海を見ていた時、隣から由紀が声をかけてくる。



「上着、二海くんから借りたの?」



「う、うん。・・・体冷やすなって言って・・・」



「ふぅん・・・クソみたいな性格してるのに、そういう気遣いはできるのね」



そう言いながら、私に暖かい飲み物と薬を差し出す由紀。



由紀を見上げるけど、視線は合わない。



「・・・何してんの、早く受け取んなさいよ」



「もらっていいの?」



「私コーヒー派だから紅茶は飲まないから」



ずいっと紅茶と薬を差し出してくる由紀に、思わず笑いながら受け取る。



由紀、口調は前と変わったけど優しいところは変わってないな。



だけど、私の体調が戻ったのは合宿が終わったあとだった。