由紀side
部活の時、最初こそ遠巻きに見られていたけど、茉弘のおかげで馴染んだようだった。
まぁ、私が口を開くと皆驚くというか・・・微妙な顔してるけど。
でも、二海くんは違った。
「あ、三島ー。そこにあるタオル取ってくんねー?」
──いつも通りだった、不自然なほど。
ドリンク作りの時だって、普通に声かけてきたし。
「あ、うん・・・はい」
「おぅ、サンキュー」
タオルを受け取ると、あちー、と言いながら顔や首に浮かんだ汗を拭き始める。
・・・昨日のこと、気にしてない?
私、キレながら告白まがいなことしたんだけど。
やっぱ、眼中に無いです・・・ってか?
だけど、悔しさはあったけどそこまで心は痛まなかった。
「・・・いつも通りなんだね。二海くん」
「まぁな。・・・告ったあとに避けられたり、たどたどしい反応されると結構こたえるだろうしな」
髪をゴシゴシと拭きながら、コートの方を向いて答える。
「・・・そんなこと言ってると、私性格悪いから茉弘との仲、邪魔しようとするかもよ。それでもいい訳?」
「構わねーよ。三島がそれでしんどくねぇならの話になるけど」
髪を拭いていたタオルを首にかけ、私の方に視線を向ける二海くん。
しんどくねぇなら、か・・・。
つまり、私に振り向くことはないって言う、遠回しな振り文句だよね。
だけど、しんどくはなかった。
昨日大号泣したから?
いや、だからといってすぐ立ち直る?普通。
「つーか、俺は“告白したことを忘れろ”って言って本気で忘れられてるし、邪魔しようがねーと思うぜ?」
「・・・は?」
二海くんの言葉を聞いて、自分でも驚くぐらい低い声が出た。
いくらアホな茉弘でも、そこまでアホじゃないでしょうに。
「・・・じゃあ、ギクシャクしなくなったのって・・・」
「俺が忘れろって言ってから・・・だな」
「うわ、茉弘クソ女じゃん!返事ぐらいすぐ返してやれよ!!」
思わず口から漏れた言葉は、予想を遥かに上回るほど口汚いものでハッとして口を手で押さえた。
「クソもクソ。かば口クソ女だな。しかも低脳ときたもんだ」
うんうん、と頷きながら、私よりさらに口汚い言葉が二海くんから飛び出してきた。
「・・・それ、仮にも好きな子に向けて言う言葉・・・?サイテーすぎじゃない?」
「三島だって似たようなこと言ってただろーが。同じだ同じ」
「いや、それと一緒にされたくないんだけど、サイテー性悪男」
二海くんの言葉を聞いて何かが音を立てて急降下していく気がした。
多分、好感度なんだと思う。
「うわ、ひでー言われよう。お前こそ俺の事好きなんじゃねーの?どこだよ好きな所、顔か?」
「え?それは・・・」
改めて聞かれると、私って二海くんのどこが好きなんだ?
中学の時になかなかなびかないって噂になってて・・・それで・・・どんな人か気になって・・・それで・・・。
──どこを、好きになったんだ?
「・・・・・・」
「・・・いや、さすがに無反応はキチィんだけど」
「あぁ、ごめん。どこを好きになったのかわかんなくて」
「うわ、どぎつい一言食らった気分」
おどけたように言ったけど、本当にどこを好きになったんだ・・・と考え込む。
ていうか、なんで今普通に話せてるんだろう・・・前までは、意地でも二海くんの前では愛嬌振りまくって決めてたはずなのに。
でも、なんでだっけ・・・。
そんなことを考えているうちにどんどんモヤモヤしてきた。
「なんか思い出せなくてイライラする。なんでこんな奴好きになってたんだ?顔か?顔なのか?」
「いや、知らねーっつーの」
そんな会話をしていたら休憩の時間が終わったらしい。
二海くんは練習へと戻っていくけど、その間もなんで好きになったのかを思い出そうとしたけど思い出せずに、モヤモヤとしていた。
なんで好きになったんだ?
クラスだって違かったし、修学旅行とか、文化祭とかも特に交流なかったし。
やっぱり顔・・・?
だとしたらすぐに思い出すだろ。
あぁ、ダメだ。
考えても考えてもそれらしい答えにたどり着けない。
モヤモヤを通り越してイライラしてきた。
ハァ、とため息をついて無くなったボトルの補充をするために外へと出る。
ドリンクを作ろうとした時、近くを通る女の子たちの声が聞こえてくる。
「てゆーかさぁ、B組の杉本くん、全然女っ気ないよね〜、なんていうか、The・インテリ系!みたいな?」
「わかる!勉強が恋人ですって感じの人ね」
「私、そーゆー人落とすの好きなんだよね〜。あ、ゲームの話なんだけど、攻略すんのが面白いのよ」
その女の子たちの会話に、デジャブを感じた。
そういえば、前にこんな感じの話してたな。
『ねぇ、バスケ部の二海くんって、全然女子と付き合ってるところ見ないよね〜、女になびかないっていうかさ』
『二海?』
『ほらぁ、3組の二海健治だよ。爽やかイケメンって感じの人!いるじゃん!』
『ちょっとさぁ、ここのメンツで色仕掛けでもしてみない?誰に1番なびくのか!リアル恋愛攻略ゲーム!!みたいなさ!』
『なにそれー、おもしろそー!!ねぇ、由紀もやろ!!絶対楽しいよ!!』
──そうだ。
・・・思い出した・・・。
リアル恋愛ゲームだとか言って・・・誰が落とせるか競ってた。
結局卒業式まで決着がつかなくて・・・それで、同じ高校に行って・・・二海くんが茉弘になびいてって・・・。
あれ?
私・・・本当に二海くんのこと恋愛対象として見てた?
なにかされて、ドキドキしたことあった?
いくら思い出そうとしても、思い出せない。
嬉しい気持ちはあっても、ドキドキするとか、恥ずかしいとかって感情は全然なかった。
ただ、振り向いて欲しくて、必死になって・・・茉弘に嫉妬してた気がする。
好きとか、そういうのは全くと言うほどなくて、リアル恋愛ゲームに負けたくない、その一心で。
「なぁんだ・・・“恋愛対象”じゃなくて“攻略対象”だったってわけね・・・」
腑に落ちたのと同時に、自分自身に呆れてしまう。
ただの“恋愛ゲーム”にあんなに必死になってしまうなんて・・・ただの馬鹿かよほどのアホだろうに。
だけど、納得した。
二海くんに振られても、悔しいって感情はありつつも悲しいって感情が一切なかったのも・・・どこを好きか聞かれてすぐ答えられなかったのも。
そりゃそうなるわ、だって“攻略対象”としか見てないんだもん。
だけど・・・スッキリした。
さっき通って行った女の子達に感謝しないとね。
部活の時、最初こそ遠巻きに見られていたけど、茉弘のおかげで馴染んだようだった。
まぁ、私が口を開くと皆驚くというか・・・微妙な顔してるけど。
でも、二海くんは違った。
「あ、三島ー。そこにあるタオル取ってくんねー?」
──いつも通りだった、不自然なほど。
ドリンク作りの時だって、普通に声かけてきたし。
「あ、うん・・・はい」
「おぅ、サンキュー」
タオルを受け取ると、あちー、と言いながら顔や首に浮かんだ汗を拭き始める。
・・・昨日のこと、気にしてない?
私、キレながら告白まがいなことしたんだけど。
やっぱ、眼中に無いです・・・ってか?
だけど、悔しさはあったけどそこまで心は痛まなかった。
「・・・いつも通りなんだね。二海くん」
「まぁな。・・・告ったあとに避けられたり、たどたどしい反応されると結構こたえるだろうしな」
髪をゴシゴシと拭きながら、コートの方を向いて答える。
「・・・そんなこと言ってると、私性格悪いから茉弘との仲、邪魔しようとするかもよ。それでもいい訳?」
「構わねーよ。三島がそれでしんどくねぇならの話になるけど」
髪を拭いていたタオルを首にかけ、私の方に視線を向ける二海くん。
しんどくねぇなら、か・・・。
つまり、私に振り向くことはないって言う、遠回しな振り文句だよね。
だけど、しんどくはなかった。
昨日大号泣したから?
いや、だからといってすぐ立ち直る?普通。
「つーか、俺は“告白したことを忘れろ”って言って本気で忘れられてるし、邪魔しようがねーと思うぜ?」
「・・・は?」
二海くんの言葉を聞いて、自分でも驚くぐらい低い声が出た。
いくらアホな茉弘でも、そこまでアホじゃないでしょうに。
「・・・じゃあ、ギクシャクしなくなったのって・・・」
「俺が忘れろって言ってから・・・だな」
「うわ、茉弘クソ女じゃん!返事ぐらいすぐ返してやれよ!!」
思わず口から漏れた言葉は、予想を遥かに上回るほど口汚いものでハッとして口を手で押さえた。
「クソもクソ。かば口クソ女だな。しかも低脳ときたもんだ」
うんうん、と頷きながら、私よりさらに口汚い言葉が二海くんから飛び出してきた。
「・・・それ、仮にも好きな子に向けて言う言葉・・・?サイテーすぎじゃない?」
「三島だって似たようなこと言ってただろーが。同じだ同じ」
「いや、それと一緒にされたくないんだけど、サイテー性悪男」
二海くんの言葉を聞いて何かが音を立てて急降下していく気がした。
多分、好感度なんだと思う。
「うわ、ひでー言われよう。お前こそ俺の事好きなんじゃねーの?どこだよ好きな所、顔か?」
「え?それは・・・」
改めて聞かれると、私って二海くんのどこが好きなんだ?
中学の時になかなかなびかないって噂になってて・・・それで・・・どんな人か気になって・・・それで・・・。
──どこを、好きになったんだ?
「・・・・・・」
「・・・いや、さすがに無反応はキチィんだけど」
「あぁ、ごめん。どこを好きになったのかわかんなくて」
「うわ、どぎつい一言食らった気分」
おどけたように言ったけど、本当にどこを好きになったんだ・・・と考え込む。
ていうか、なんで今普通に話せてるんだろう・・・前までは、意地でも二海くんの前では愛嬌振りまくって決めてたはずなのに。
でも、なんでだっけ・・・。
そんなことを考えているうちにどんどんモヤモヤしてきた。
「なんか思い出せなくてイライラする。なんでこんな奴好きになってたんだ?顔か?顔なのか?」
「いや、知らねーっつーの」
そんな会話をしていたら休憩の時間が終わったらしい。
二海くんは練習へと戻っていくけど、その間もなんで好きになったのかを思い出そうとしたけど思い出せずに、モヤモヤとしていた。
なんで好きになったんだ?
クラスだって違かったし、修学旅行とか、文化祭とかも特に交流なかったし。
やっぱり顔・・・?
だとしたらすぐに思い出すだろ。
あぁ、ダメだ。
考えても考えてもそれらしい答えにたどり着けない。
モヤモヤを通り越してイライラしてきた。
ハァ、とため息をついて無くなったボトルの補充をするために外へと出る。
ドリンクを作ろうとした時、近くを通る女の子たちの声が聞こえてくる。
「てゆーかさぁ、B組の杉本くん、全然女っ気ないよね〜、なんていうか、The・インテリ系!みたいな?」
「わかる!勉強が恋人ですって感じの人ね」
「私、そーゆー人落とすの好きなんだよね〜。あ、ゲームの話なんだけど、攻略すんのが面白いのよ」
その女の子たちの会話に、デジャブを感じた。
そういえば、前にこんな感じの話してたな。
『ねぇ、バスケ部の二海くんって、全然女子と付き合ってるところ見ないよね〜、女になびかないっていうかさ』
『二海?』
『ほらぁ、3組の二海健治だよ。爽やかイケメンって感じの人!いるじゃん!』
『ちょっとさぁ、ここのメンツで色仕掛けでもしてみない?誰に1番なびくのか!リアル恋愛攻略ゲーム!!みたいなさ!』
『なにそれー、おもしろそー!!ねぇ、由紀もやろ!!絶対楽しいよ!!』
──そうだ。
・・・思い出した・・・。
リアル恋愛ゲームだとか言って・・・誰が落とせるか競ってた。
結局卒業式まで決着がつかなくて・・・それで、同じ高校に行って・・・二海くんが茉弘になびいてって・・・。
あれ?
私・・・本当に二海くんのこと恋愛対象として見てた?
なにかされて、ドキドキしたことあった?
いくら思い出そうとしても、思い出せない。
嬉しい気持ちはあっても、ドキドキするとか、恥ずかしいとかって感情は全然なかった。
ただ、振り向いて欲しくて、必死になって・・・茉弘に嫉妬してた気がする。
好きとか、そういうのは全くと言うほどなくて、リアル恋愛ゲームに負けたくない、その一心で。
「なぁんだ・・・“恋愛対象”じゃなくて“攻略対象”だったってわけね・・・」
腑に落ちたのと同時に、自分自身に呆れてしまう。
ただの“恋愛ゲーム”にあんなに必死になってしまうなんて・・・ただの馬鹿かよほどのアホだろうに。
だけど、納得した。
二海くんに振られても、悔しいって感情はありつつも悲しいって感情が一切なかったのも・・・どこを好きか聞かれてすぐ答えられなかったのも。
そりゃそうなるわ、だって“攻略対象”としか見てないんだもん。
だけど・・・スッキリした。
さっき通って行った女の子達に感謝しないとね。



