由紀side
昨日のこともあり、泣き腫らした顔で学校に行くはめになった。
正直休みたいけど、いい子の振りをしていた時の名残なのか、ズル休みをする勇気はなかった。
誰にも会いたくない、そう思いながら教室の扉を開いたら、コソコソと私のことを言っているのが聞こえてくる。
そりゃそうか、おしとやかな印象しかない私が急にあんな風に怒り散らしたらあーだこーだ言われるよね。
そんな声を全部無視して自分の席に行く。
そしたら、あろうことか昨日あれだけ酷いことを言ってしまった茉弘が声をかけてきた。
しかも、いつもと変わらない笑顔で。
茉弘は、気にしてないように話始め、終いには課題を一緒にやろうとまで言い出した。
そんな彼女の態度を見て、痛感する。
私、本当に最低だ・・・敵わないな。
本っ当、笑えるぐらいいい子・・・二海くんが好きになるのもわかる。
頭を抱えながら唸っている茉弘を見つめながら昨日のことを思い出す。
“でも・・・他の人も同じだと思うよ”
茂木さんの言葉、お世辞じゃなかったな。
そんなことを考えながら、課題を進めた。
結局、茉弘は間に合わなかったらしく怒られていた。
放課後になって、すごく傷付きました!と報告したあと、お手洗いに行きたい!と走り去っていく。
うるさい人だなぁ・・・。
そう思ってる時、教室の前に茂木さんの姿があった。
「由紀ちゃん、これから部活かい?」
「あ・・・えっと・・・はい。だけど、あんま行きたくないって言うか・・・めんどくさいというか・・・二海くんに会いたくないです」
「アハハ、正直でよろしい!あんな事あってからじゃ、部活行きにくいよね〜・・・。俺も一緒に行こうか?」
最近、茂木さんは就職活動で部活に顔をあまり出していない。
昨日も私に付き添ってくれてたから、顔を出していないし。
さすがに2日連続で就職活動を邪魔したくない。
「あ・・・いや、大丈夫──うわっ!?」
大丈夫です、そう言おうとした時、後ろから誰かに抱きつかれる。
ビクッと体を揺らしたあと、後ろを振り向いてみると・・・。
「ビックリした?私だよ!一緒に部活行こ!」
トイレから戻った茉弘が、私に抱きついてきていた。
しかも、制服から体操着に着替えている。
「やぁ、茉弘ちゃん。今日も元気だね」
「茂木先輩!もちろんです!だけど課題終わらなくて鬼センにすごい顔で怒られました・・・夢に出るんだよな〜、あの顔」
私から離れて茂木さんと会話する茉弘。
そういえば、茉弘って茂木さんとは中学時代からの知り合いだよね。
やっぱり、今みたいな感じだったのかな?
「あっ、ヤバ!タイマー!!別のバックの中だ〜!!ちょっと取ってきます!」
そう言って、バタバタと音を立てながら教室の中に入っていく。
なんか、嵐みたいだな・・・茉弘らしいっちゃらしいけど。
そんなことを思いながらクスッと笑うと茂木さんもふふっと遠慮気味に笑った。
「あの様子を見ると和睦できたみたいだね。茉弘ちゃん、由紀ちゃんの言ってたこと気にしてなかったでしょ」
何かを悟ったように、笑いを堪えながら口元に手を当ててクスクスと笑う茂木さんは私の顔をのぞき込むようにして見つめてくる。
「・・・気にしなさすぎて逆に気味悪かった、です」
「アハハハ、そっか〜。茉弘ちゃん、前からあんな感じだよ〜」
「!」
今、本音を言ったのに・・・茂木さん、笑って受け流してくれた。
ほかの人に言ったら絶対、妙な顔して引かれるかするのに・・・何も言わないどころか──・・・。
「・・・?どうしたの?気分悪い?」
急に考え込んだ私をのぞき込むように、少しかかんで上目遣いで見つめてくる茂木さん。
「っ、大丈夫です。・・・ただ・・・」
気恥ずかしくて茂木さんに背を向ける。
そして、どう言葉を続けようか迷ってうつむいた。
「・・・ただ・・・?」
「・・・本音を言っても、引かないんだなーと思って・・・だって私、自分で言うのもなんですけど、前まで愛嬌振りまいて2年機械科のマドンナとか言われるぐらいおしとやかで清楚なイメージで通ってたし・・・急に口悪くなったとかって妙な顔されて引かれてたんで・・・ちょっと驚きました」
「んー、だって引く必要ないじゃん?愛嬌ある由紀ちゃんも本音で話してくれる由紀ちゃんも好きだし。それに──・・・」
茂木さんが言葉を紡いでいる時、またしてもバタバタという足音が聞こえてくる。
「何も着飾らない素を見せてくれるってことは、多少なりは俺に心を開いてくれてるのかなって思えるし。好いてもらえてるのかなー、なんて嬉しい気持ちになってる」
茉弘が近寄ってくるのと同時に、嬉しそうに微笑みながら言葉を紡ぐ茂木さん。
多分、前と同じ・・・深い意味は無い、なんの気なく紡がれた言葉のはずなのに・・・。
「っ・・・」
特別な意味があるんじゃないかって、考えてしまう自分がいる。
「その様子だと、俺がいなくても平気そうかな?部活頑張って」
茉弘と入れ替わるようにしてその場を去っていく茂木さん。
「由紀、お待たせ。部活行こ──・・・。大丈夫?なんか顔赤くない?」
「・・・別に。なんでもない、あついだけ」
「私も走ったから“暑い”や、体育館言ったら上脱ごっかな」
手で仰ぎながらそういう茉弘。
だけど・・・違うんだ、茉弘。
“暑い”んじゃなくて、“熱い”んだ。
やけに──顔が熱い。
昨日のこともあり、泣き腫らした顔で学校に行くはめになった。
正直休みたいけど、いい子の振りをしていた時の名残なのか、ズル休みをする勇気はなかった。
誰にも会いたくない、そう思いながら教室の扉を開いたら、コソコソと私のことを言っているのが聞こえてくる。
そりゃそうか、おしとやかな印象しかない私が急にあんな風に怒り散らしたらあーだこーだ言われるよね。
そんな声を全部無視して自分の席に行く。
そしたら、あろうことか昨日あれだけ酷いことを言ってしまった茉弘が声をかけてきた。
しかも、いつもと変わらない笑顔で。
茉弘は、気にしてないように話始め、終いには課題を一緒にやろうとまで言い出した。
そんな彼女の態度を見て、痛感する。
私、本当に最低だ・・・敵わないな。
本っ当、笑えるぐらいいい子・・・二海くんが好きになるのもわかる。
頭を抱えながら唸っている茉弘を見つめながら昨日のことを思い出す。
“でも・・・他の人も同じだと思うよ”
茂木さんの言葉、お世辞じゃなかったな。
そんなことを考えながら、課題を進めた。
結局、茉弘は間に合わなかったらしく怒られていた。
放課後になって、すごく傷付きました!と報告したあと、お手洗いに行きたい!と走り去っていく。
うるさい人だなぁ・・・。
そう思ってる時、教室の前に茂木さんの姿があった。
「由紀ちゃん、これから部活かい?」
「あ・・・えっと・・・はい。だけど、あんま行きたくないって言うか・・・めんどくさいというか・・・二海くんに会いたくないです」
「アハハ、正直でよろしい!あんな事あってからじゃ、部活行きにくいよね〜・・・。俺も一緒に行こうか?」
最近、茂木さんは就職活動で部活に顔をあまり出していない。
昨日も私に付き添ってくれてたから、顔を出していないし。
さすがに2日連続で就職活動を邪魔したくない。
「あ・・・いや、大丈夫──うわっ!?」
大丈夫です、そう言おうとした時、後ろから誰かに抱きつかれる。
ビクッと体を揺らしたあと、後ろを振り向いてみると・・・。
「ビックリした?私だよ!一緒に部活行こ!」
トイレから戻った茉弘が、私に抱きついてきていた。
しかも、制服から体操着に着替えている。
「やぁ、茉弘ちゃん。今日も元気だね」
「茂木先輩!もちろんです!だけど課題終わらなくて鬼センにすごい顔で怒られました・・・夢に出るんだよな〜、あの顔」
私から離れて茂木さんと会話する茉弘。
そういえば、茉弘って茂木さんとは中学時代からの知り合いだよね。
やっぱり、今みたいな感じだったのかな?
「あっ、ヤバ!タイマー!!別のバックの中だ〜!!ちょっと取ってきます!」
そう言って、バタバタと音を立てながら教室の中に入っていく。
なんか、嵐みたいだな・・・茉弘らしいっちゃらしいけど。
そんなことを思いながらクスッと笑うと茂木さんもふふっと遠慮気味に笑った。
「あの様子を見ると和睦できたみたいだね。茉弘ちゃん、由紀ちゃんの言ってたこと気にしてなかったでしょ」
何かを悟ったように、笑いを堪えながら口元に手を当ててクスクスと笑う茂木さんは私の顔をのぞき込むようにして見つめてくる。
「・・・気にしなさすぎて逆に気味悪かった、です」
「アハハハ、そっか〜。茉弘ちゃん、前からあんな感じだよ〜」
「!」
今、本音を言ったのに・・・茂木さん、笑って受け流してくれた。
ほかの人に言ったら絶対、妙な顔して引かれるかするのに・・・何も言わないどころか──・・・。
「・・・?どうしたの?気分悪い?」
急に考え込んだ私をのぞき込むように、少しかかんで上目遣いで見つめてくる茂木さん。
「っ、大丈夫です。・・・ただ・・・」
気恥ずかしくて茂木さんに背を向ける。
そして、どう言葉を続けようか迷ってうつむいた。
「・・・ただ・・・?」
「・・・本音を言っても、引かないんだなーと思って・・・だって私、自分で言うのもなんですけど、前まで愛嬌振りまいて2年機械科のマドンナとか言われるぐらいおしとやかで清楚なイメージで通ってたし・・・急に口悪くなったとかって妙な顔されて引かれてたんで・・・ちょっと驚きました」
「んー、だって引く必要ないじゃん?愛嬌ある由紀ちゃんも本音で話してくれる由紀ちゃんも好きだし。それに──・・・」
茂木さんが言葉を紡いでいる時、またしてもバタバタという足音が聞こえてくる。
「何も着飾らない素を見せてくれるってことは、多少なりは俺に心を開いてくれてるのかなって思えるし。好いてもらえてるのかなー、なんて嬉しい気持ちになってる」
茉弘が近寄ってくるのと同時に、嬉しそうに微笑みながら言葉を紡ぐ茂木さん。
多分、前と同じ・・・深い意味は無い、なんの気なく紡がれた言葉のはずなのに・・・。
「っ・・・」
特別な意味があるんじゃないかって、考えてしまう自分がいる。
「その様子だと、俺がいなくても平気そうかな?部活頑張って」
茉弘と入れ替わるようにしてその場を去っていく茂木さん。
「由紀、お待たせ。部活行こ──・・・。大丈夫?なんか顔赤くない?」
「・・・別に。なんでもない、あついだけ」
「私も走ったから“暑い”や、体育館言ったら上脱ごっかな」
手で仰ぎながらそういう茉弘。
だけど・・・違うんだ、茉弘。
“暑い”んじゃなくて、“熱い”んだ。
やけに──顔が熱い。



