由紀side
ある日を境に、二海くんと茉弘がギクシャクし始めた。
正確に言うなら、買出しを行った日から。
私の時は行かないって言ってたくせに、茉弘にはついて行った、あの日から。
いつもなら同じ電車で来るはずなのに1本ずらして来るようになった茉弘。
授業前の時間も会話はなし。
二海くんが何かを話そうとしても、茉弘は逃げていくか無視をしていた。
理由はわかんないけど、好機だと思った。
茉弘と二海くんの仲が悪くなった今なら、私を見てくれるかもしれない。
そう、思ってたのに。
今日、普通に話をし始めた。
昨日までは本人に話しかけることすら敬遠してたはずなのに。
なんで・・・?
なんて元に戻ってるの?
ギクシャクしたままでいてよ。
そうじゃないと・・・!!
あのまま、ギクシャクし続けてれば良かったのに・・・!
そんなことを思いながら、楽しそうに話す2人を睨みつける。
二海くん、嬉しそう・・・あんな奴のどこがいいの?
私の方が可愛いし、スタイルだっていい。
髪の毛だって気を使ってるし、いい匂いのするコロンだって使ってる。
それなのに・・・。
「あの、三島さん」
私を呼ぶ声にビクッと身体を震わせた。
モサっとした前髪に、分厚いメガネ・・・えっと、名前は確か・・・。
「え、っと──山崎くん、どうしたの?」
慌てて笑顔を作り、山崎を見る。
確か、前に茉弘がヤンキーに突き落とされた時に酷く心配してたヤツだ。
「ちょっとお話があるんだけど、一緒に来てくれますか?」
私、これから二海くんのところに行って話しようと思ってたんだけどな。
でも、断る訳には行かないよね・・・モサ男、キョーミないんだけどな。
「うん、いいよ〜」
いつものように笑顔を作る。
正直、相手なんかしたくない。
けど、機械科のマドンナって言われるぐらいになれたんだ。
こんなことでそのブランドを手放す訳には行かない。
「ありがとう。ここじゃなんだから場所、変えさせて?」
「いいよ」
山崎のあとをついていくと、人気のない廊下に連れてこられた。
これ、まさか告白じゃないよね。
いや、雰囲気的にそんな感じがする。
そんなに絡みなかったじゃん・・・どうしてそんなんで告白成功すると思ってんの?
「それで、話って?」
どうせ断るんだし、さっさと済ませよう。
そんな気持ちで相手の言葉を待つ。
「あの・・・俺、好きな人がいて・・・」
うわ、来たー・・・王道パターン。
あなたなんですけど、俺に希望ありますかって聞くやつじゃん。
残念ながら夢も希望もありませーん。
自分の顔面見直してから来いって感じ。
それに、こんなモサい奴に告られても迷惑なだけなんですけど。
「・・・こんなモサい奴に告られてもメーワクなだけなんだけど、って思っただろ、今」
「!!」
なに・・・心読まれた!?
しかも、今、なんかさっきまでと印象違うんだけど。
「当たってただろ?お前、意外と気ぃ抜くと表情に出るよな。面白いぐらいにわかりやすいぜ」
「・・・」
確かに、私は気を抜くと表情に出やすいタイプではある。
でも、今はそんなに気を抜いてなかった。
じゃあ、なんで。
「・・・なんで、そう思うの?」
気付いたら、声のトーンが下がっていた。
だけど、山崎はそんなことを気にせず髪の毛をかきあげてメガネを取った。
「俺に似てるからね、そりゃわかるさ。どうせ好きなやつは二海なんだろ?」
晒された山崎の素顔は正直カッコイイものだった。
切れ長な目に整った顔立ち・・・普通にしてればモテそうな容姿をしている。
なんでモサい格好してるのか。
そして、なんで私と似てると言ったのか。
答えはひとつだ。
「・・・なるほど、アンタも猫被ってるってわけ」
私は猫をかぶるのをやめた。
同類に猫をかぶったって、ただの痛い人だ。
猫被り続けるのもしんどいし、息抜きしたかったし。
「ま、告る気なんてさらさらねぇけどな、俺が好きなの辻本さんだし」
「へぇ・・・茉弘の事好きなんだ、意外」
ほかの女の子からもモテそうなのに、茉弘なんだ。
そんなことを思っていると、自分で外したメガネを見つめ出す山崎。
「裏表なく変装してる俺に接してくれたから。俺、こう言っちゃなんだけど中学ん時からモテすぎて、面食いのやつとか大っ嫌いでさ。この格好してるのも面食いに相手されないため。・・・お前も面食いだよな」
「安心してよ、アンタに興味ない」
私が好きなのは二海くんただ1人。
それ以外の男は論外だ。
「だから声かけたんだろ」
ふん、と鼻を鳴らす山崎。
「そんなわけで、提案。俺は辻本さんを落としたいけど二海が邪魔、お前は二海を落としたいけど辻本さんが邪魔・・・だったら、お互いがお互いの邪魔な相手を落とそうぜって話」
その言葉で、ハッとする。
確かに二海くんを落とすのに茉弘は邪魔だ、利害は一致してる。
「・・・そうね。二海くんを手に入れるためには茉弘が邪魔だったの。いいわよ。その提案、乗ってあげる」
「ふっ、心強いぜ。頑張ってくれよ、機械科のマドンナさん」
そう言って、山崎は前髪を戻してメガネをかけて教室へと戻っていく。
私も、何事も無かったかのように教室へと戻った。
ある日を境に、二海くんと茉弘がギクシャクし始めた。
正確に言うなら、買出しを行った日から。
私の時は行かないって言ってたくせに、茉弘にはついて行った、あの日から。
いつもなら同じ電車で来るはずなのに1本ずらして来るようになった茉弘。
授業前の時間も会話はなし。
二海くんが何かを話そうとしても、茉弘は逃げていくか無視をしていた。
理由はわかんないけど、好機だと思った。
茉弘と二海くんの仲が悪くなった今なら、私を見てくれるかもしれない。
そう、思ってたのに。
今日、普通に話をし始めた。
昨日までは本人に話しかけることすら敬遠してたはずなのに。
なんで・・・?
なんて元に戻ってるの?
ギクシャクしたままでいてよ。
そうじゃないと・・・!!
あのまま、ギクシャクし続けてれば良かったのに・・・!
そんなことを思いながら、楽しそうに話す2人を睨みつける。
二海くん、嬉しそう・・・あんな奴のどこがいいの?
私の方が可愛いし、スタイルだっていい。
髪の毛だって気を使ってるし、いい匂いのするコロンだって使ってる。
それなのに・・・。
「あの、三島さん」
私を呼ぶ声にビクッと身体を震わせた。
モサっとした前髪に、分厚いメガネ・・・えっと、名前は確か・・・。
「え、っと──山崎くん、どうしたの?」
慌てて笑顔を作り、山崎を見る。
確か、前に茉弘がヤンキーに突き落とされた時に酷く心配してたヤツだ。
「ちょっとお話があるんだけど、一緒に来てくれますか?」
私、これから二海くんのところに行って話しようと思ってたんだけどな。
でも、断る訳には行かないよね・・・モサ男、キョーミないんだけどな。
「うん、いいよ〜」
いつものように笑顔を作る。
正直、相手なんかしたくない。
けど、機械科のマドンナって言われるぐらいになれたんだ。
こんなことでそのブランドを手放す訳には行かない。
「ありがとう。ここじゃなんだから場所、変えさせて?」
「いいよ」
山崎のあとをついていくと、人気のない廊下に連れてこられた。
これ、まさか告白じゃないよね。
いや、雰囲気的にそんな感じがする。
そんなに絡みなかったじゃん・・・どうしてそんなんで告白成功すると思ってんの?
「それで、話って?」
どうせ断るんだし、さっさと済ませよう。
そんな気持ちで相手の言葉を待つ。
「あの・・・俺、好きな人がいて・・・」
うわ、来たー・・・王道パターン。
あなたなんですけど、俺に希望ありますかって聞くやつじゃん。
残念ながら夢も希望もありませーん。
自分の顔面見直してから来いって感じ。
それに、こんなモサい奴に告られても迷惑なだけなんですけど。
「・・・こんなモサい奴に告られてもメーワクなだけなんだけど、って思っただろ、今」
「!!」
なに・・・心読まれた!?
しかも、今、なんかさっきまでと印象違うんだけど。
「当たってただろ?お前、意外と気ぃ抜くと表情に出るよな。面白いぐらいにわかりやすいぜ」
「・・・」
確かに、私は気を抜くと表情に出やすいタイプではある。
でも、今はそんなに気を抜いてなかった。
じゃあ、なんで。
「・・・なんで、そう思うの?」
気付いたら、声のトーンが下がっていた。
だけど、山崎はそんなことを気にせず髪の毛をかきあげてメガネを取った。
「俺に似てるからね、そりゃわかるさ。どうせ好きなやつは二海なんだろ?」
晒された山崎の素顔は正直カッコイイものだった。
切れ長な目に整った顔立ち・・・普通にしてればモテそうな容姿をしている。
なんでモサい格好してるのか。
そして、なんで私と似てると言ったのか。
答えはひとつだ。
「・・・なるほど、アンタも猫被ってるってわけ」
私は猫をかぶるのをやめた。
同類に猫をかぶったって、ただの痛い人だ。
猫被り続けるのもしんどいし、息抜きしたかったし。
「ま、告る気なんてさらさらねぇけどな、俺が好きなの辻本さんだし」
「へぇ・・・茉弘の事好きなんだ、意外」
ほかの女の子からもモテそうなのに、茉弘なんだ。
そんなことを思っていると、自分で外したメガネを見つめ出す山崎。
「裏表なく変装してる俺に接してくれたから。俺、こう言っちゃなんだけど中学ん時からモテすぎて、面食いのやつとか大っ嫌いでさ。この格好してるのも面食いに相手されないため。・・・お前も面食いだよな」
「安心してよ、アンタに興味ない」
私が好きなのは二海くんただ1人。
それ以外の男は論外だ。
「だから声かけたんだろ」
ふん、と鼻を鳴らす山崎。
「そんなわけで、提案。俺は辻本さんを落としたいけど二海が邪魔、お前は二海を落としたいけど辻本さんが邪魔・・・だったら、お互いがお互いの邪魔な相手を落とそうぜって話」
その言葉で、ハッとする。
確かに二海くんを落とすのに茉弘は邪魔だ、利害は一致してる。
「・・・そうね。二海くんを手に入れるためには茉弘が邪魔だったの。いいわよ。その提案、乗ってあげる」
「ふっ、心強いぜ。頑張ってくれよ、機械科のマドンナさん」
そう言って、山崎は前髪を戻してメガネをかけて教室へと戻っていく。
私も、何事も無かったかのように教室へと戻った。



