保健室にたどり着き、扉を開けるけど先生は不在みたいでもぬけの殻だった。
「先生は・・・外出中か・・・」
だけど、少し休ませてもらう分にはいいかな。
そう思って、二海の方を振り返ろうとする。
「二海、とりあえず先生いないから──」
振り返ると、片手で顔を隠しながらこちらを見ている二海と目が合った。
「・・・・・・辻本、手・・・」
その言葉で、私がずっと二海の手を握っていることに気付く。
「っ・・・!?ごっ、ゴメン!」
夢中になりすぎて現状を理解できてなかった!
素早く二海の手を離したけど、この手をどこにやったらいいか分からず彷徨わせる。
「あ、あの・・・二海、なんかいつもより顔色悪いし、様子変だったから夢中になってて・・・!」
顔を赤くしながらこちらを見ている二海につられるようにして顔が熱くなる。
真っ赤な顔してる二海、間近で見たの初めてなんだけど。
なんか・・・破壊力がある。
まぁ、熱があるなら仕方ないよね。
「・・・いや、大丈夫・・・。ハァ〜・・・」
そういうと、二海はしゃがみ込んだ。
「二海!?大丈夫!?かなり酷いの!?」
二海に寄り添うようにしゃがみこみ、背中を支える。
あんだけ額が熱ければ、相当な熱が出てるはず。
立ってるのだってしんどいよな。
「・・・大丈夫だよ。お前は心配しすぎ」
そう言って立ち上がろうとするけど、グラッと体勢が崩れる。
それをなんとか支えて体勢を立て直す。
「フラフラじゃんか!・・・もう、ベットに横になろ?」
二海を支えながら、何とかベットに横にさせる。
こんなになるまで誰にも言わないなんて・・・もう少し、周囲を頼ればいいのに。
そんなことを考えながら、二海のおでこに手をあてる。
「熱・・・こんな体でよく動けてたよね、全く・・・」
そんなことを言っていると、二海が私の手を掴んできた。
「っ・・・!あの・・・二海、手・・・!」
“好きだからだよ!・・・お前が・・・”
あの時の言葉を思い出して、動揺のあまり1歩後ろに下がる。
すごく逃げ出したい気持ちになってしまう。
「・・・・・・なぁ、辻本」
「っ・・・な、なにっ・・・!?」
少しかすれた声で私の名前を呼ぶ二海。
その声も熱があるせいかどこか妖艶に聞こえた。
「・・・俺・・・前にお前に好きだって言ったこと・・・覚えてるよな」
「っ・・・お、覚えてるけど・・・」
忘れるわけが無い。
むしろあんな衝撃的な発言、忘れる方が無理な話だ。
「・・・で、さ・・・その事なんだけど・・・俺の事意識してくれんのは嬉しいけど、避けられるとやっぱ傷付くんだわ」
「あっ・・・」
ここ1週間、ずっと二海を避け続けてたけど・・・傷付けてたんだ。
「だから、さ・・・俺の言ったこと、忘れてくんね?思ったより、お前に避けられんのこたえるんだわ」
ズキッ・・・。
「う、うん・・・わかった・・・」
そう答えたはいいけど、何故か胸がズキズキと痛んだ。
「・・・悪ぃな・・・」
そう言って、二海は私の手をゆっくりと離した。
どことなく、名残惜しそうにしながら。
その時、ガラッと音を立てて扉が開いた。
「おーい、二海〜。生きてるかー?」
中に入ってきたのは真琴先生だった。
二海のことを知ってるってことは、もしかすると茂木先輩が伝えに行ったのかもしれない。
「!辻本が見ててくれたのか。ありがとな。あとは任せろ」
「はい。じゃあ、よろしくお願いします」
真琴先生に頭を下げ、その場を後にする。
・・・忘れてくれ、か・・・。



