犬猿☆ラブコンフリクト

二海side



練習中、茂木さんに言われて辻本と買い出しに行くことになった。



“茉弘ちゃんの事が好きなら、一緒に行ってきな”



耳打ちされた言葉に少し戸惑いを覚えつつ、気を紛らわせるために辻本に悪態をつきながら店へと行った。



買い出しが終わり、新作のバッシュを見てから辻本の所に行こうとしたら、男に連れ去られそうになってやがった。



何とか助けられたけど、焦りと怒りで思わず口喧嘩しちまった。



しかも自分は可愛くないから狙われないと思ってた、みたいなことを言いやがった。



可愛いに決まってんだろ、何言ってんだこいつは。



そんなことを考えながら口論しているうちに、思わず告白しちまった。



やっちまった・・・そう思った時には既に遅くて。



恐る恐る辻本のことを見たら、見たことないぐらいに顔を真っ赤にさせてた。



そのまま逃げるように学校に戻っちまって・・・追いかけて体育館の前まできたけど、どんな顔して会えばいいのかわかんねぇ。



「ハァ〜・・・」



・・・勢いで辻本に告白しちまったな・・・。



めっちゃ避けられたし・・・。



でも、あの時見た照れ顔、めっちゃ可愛かったな。



「あ゛ー・・・」



自分の愚かな行動と辻本の可愛い顔を思い出して、しゃがみこんで頭をかく。



どーすっかな、これから。



「二海、何やってんだ?こんな所で・・・」



頭を抱えていると、頭の上から声がかかった。



茂木さんだ。



「・・・いや、なんでもないっす」



頭を抱えながら茂木さんに答える。



「・・・そういや、“茉弘ちゃん”も先に帰ってきたけど──」



「ッ・・・!」



茂木さんの言葉で、ドキッと心臓が高鳴る。



ダメだ、辻本って聞くだけでさっきのこと思い出しちまう。



「・・・お前ら、なんかあったの?茉弘ちゃんの様子も変だったし・・・」



「・・・・・・」



これは、隠せねぇよな。



そんなことを考えながら、ガシガシと自分の頭をかいた。



「・・・買出し中に、アイツが連れ去られそうになってやがって・・・気をつけろって口論してるうちに・・・告白しちまって・・・」



恥ずかしくて、茂木さんから視線を逸らしながら訳を話すとあー、と納得したような返答が返ってきた。



あー・・・だっせぇ・・・俺。



「アイツ、今どこにいます?」



「中で手伝いしてくれてるよ」



茂木さんが体育館の中を指差しながら答えてくれる。



中か・・・中にいんのかよ・・・。



「あ゛ー・・・どんな面して入ればいいんだ・・・」



顔を覆いながら、どうしようか考える。



どうしたって中で鉢合わせになるのは目に見えてるし、かと言って中に入らないわけにもいかないし。



「・・・ぷっ・・・」



そんなことを考えていると、茂木さんが吹き出した。



「ちょっ・・・何笑ってんすか・・・!」



こっちは必死こいて考えてるってのに、この人は・・・!



さては、他人事だと思って面白がってやがるな!?



「いやっ・・・二海がこんなになるなんて面白くて・・・そういうことには慣れてそうなのにな」



「・・・うっさいっすよ。・・・告白はされるけど自分で告ったことなんてないんスから・・・!」



我ながら、初告白があんなムードの欠片もない勢い任せなものとか、どうかと思うけど。



気付いたら口に出してたっつーか・・・可愛いって言った時点で気付いて欲しかったっつーか。



「うわ出た、サラッとモテ男自慢」



「そういうんじゃないっすよ・・・。どーいう顔すればいいのか──」



「茂木先輩、もうそろそろ休憩終わり・・・」



俺が話している最中、ガラッと体育館の扉が開いて辻本が顔を出した。



驚きのあまり口を開けたまま辻本のことを見る。



すると、辻本と目が合った。



「ふっ・・・二海も早く練習混ざりなよッ・・・!!」



裏返った声で俺にそういうと、すぐに扉を閉めてバタバタと中で音がした。



「・・・そういう顔だったな」



「っっ・・・!!」



クソ・・・はっずい・・・。



顔を覆い隠して、頬の熱が覚めるのを待った。