「辻本!大丈夫か!?」
駆け寄ってくる二海を、呆然と見つめる。
今、私・・・さらわれそうになった・・・?
「っ・・・バカ!なにやってんだ!気ぃ付けろよ!!」
肩を掴まれて強い言葉を投げかけられる。
放心状態な私は、目を丸くしながら二海を見ることしか出来なかった。
「ご、ごめん・・・だって、道案内して欲しいって言われて・・・気付いたら腕掴まれてて・・・」
「道なんてスマホのナビ使えば聞く必要ねぇことだろうが!ちょっと考えれば分かるだろバカ!!」
「だ、だって私もこうなるなんて思ってなくて・・・!ほら、私、可愛くないし、ガサツだし、女の子っぽくないから、狙われるなんて思いもしなかったの・・・!」
今までも、何回かナンパや絡まれることはあった。
でもそれは私が割って入って、じゃあついでに君も・・・みたいな感じだった。
私単品を狙って来た人なんて、今までいなかったし。
「っざっけんな!!お前は可愛いし女の子だろ!?自覚しろよっ!!」
「私を可愛いなんて思う奴なんて誰もいないでしょ!?今まで1回も言われたことなんてないって!!」
「俺は思ってるっつーの!!」
気が動転して、変なところでムキになってしまう。
二海が言った言葉を素直に飲み込めないほどに。
「なんでよ!!いつも罵ってくるくせに!!」
「好きだからだよ!!・・・お前が・・・」
「・・・へ・・・」
頭に血が上っていたのが急降下する感じがした。
今、二海・・・好きって言った・・・?
私を・・・?
二海はバッと口を押さえてうろたえている様子だった。
二海が・・・私のことを、好き・・・?
かなりの時間がかかったが、完全に理解した。
その瞬間、顔から火が出るんじゃないかってぐらい熱を持ち始めた。
「あ、えっと・・・辻本・・・」
二海は、しどろもどろに私の名前を呼ぶ。
今までだって呼ばれてたはずなのに、ドキッと心臓が高鳴る。
「っ・・・!?ちょっ・・・!お前・・・その顔・・・!」
心臓が破裂しそうなほどドキドキと鳴り響くのが限界に達した私は、その場から走って逃げ出した。
「おい、辻本っ・・・!!」
名前を呼ばれたけど、それに答えられる余裕は私にはなかった。



