店内から外へ出てすぐのところに、日陰のベンチがあるのを見つける。
ここなら二海もすぐにわかるでしょ。
そう考えて、荷物を下ろして腰掛ける。
ちょっと持っただけでも結構重いな、荷物。
二海に荷物持ちお願いしてよかった。
そんなことを考えながら休んでいると、目の前にあった道路に黒い車が止まった。
中から人が降りてきて、私の方に真っ直ぐ向かってくる。
「あの、すみません。神社に行きたいんですけど、道、分かりますか?」
どうやら道に迷ったらしい、助手席から降りてきた人は、申し訳なさそうにしながら私に声をかけてきた。
「神社ならここの道真っ直ぐ行って、T字路を左に曲がればありますよ」
「僕、記憶力がないので出来れば道案内をして欲しいんですけど」
説明をしたけど、食い下がる男の人。
今の説明で大体の人は理解して帰っていくんだけどな。
「構いませんけど・・・私、人を待ってるのでその人に確認取ってきてもいいですか?」
「いえいえ、時間は取らせませんので」
そう言って、私の腕を掴む男の人。
力強く腕を握られ、ビクリと体が跳ねる。
腕をつかまれたことによって、脳が、体全身が、これはやばいと警笛を鳴らす。
「・・・スマホからのナビでもたどり着けると思うんですけど、なんで・・・私に聞いてきたんですか?」
恐る恐る問いかけた質問。
それに対する返答はなく、思いっきり引っ張られる。
「ちょっと・・・離して!」
抵抗しようにも、がっちりと掴まれた腕は振りほどけなくて、ズルズルと車の方に引きずられていく。
「やだっ!!離してってば!!離してっ!!」
体全体を使って抵抗するけど、両腕を掴まれてしまい振りほどけない。
周囲にいた人も、何事かと騒ぎ立てている。
「チッ・・・早くしろ!」
ドスの効いた言葉で完全に体が萎縮する。
これ、ガチでヤバいやつだ。
「──っ!!!辻本っ!!」
聞き慣れた声で呼ばれた名前。
声のした方に視線を向けると、スマホを耳に当てながらこちらに走ってくる二海の姿があった。
「チッ・・・!」
男は舌打ちしながら私の手を離して、車の中に乗り込み急発進してその場を立ち去った。
解放された腕には強く握られたせいもあって赤く跡が残っている。
二海が来てくれなかったら、どうなっていたか分からない。
そんな恐怖が、私の手足を震えさせた。



