学校を出て目的の場所へと向かう最中、隣にいる二海を見上げる。
コイツ、バスケやってるだけあって身長高いんだよな・・・180cmはあるんじゃないか?
「・・・で?そんなヒョロッヒョロな体で荷物持ちできるのかしらー?」
さっきゴリラ女と言われたお返しと言わんばかりに、二海を煽る。
前を向いていた二海は、私の言葉でこちらに視線を向けた。
「俺は普通体型です〜、ていうか、どっちかって言うと細マッチョ系だろ」
二海は力こぶを作りながら、私に見せてくる。
確かに細身の体にしては筋肉がしっかりついてるように見える。
でも、見えるだけだ。
「そういうことは自分で決めるんじゃなくて他人が決めることでしょ?そんなことも知らないんですかー?」
「他のやつも細マッチョだねって言ってましたー、ザンネーン。よく見てみろよ、筋肉あるだろ」
ざまぁみろ、と言わんばかりの表情をしながら舌を見せる二海。
その顔腹立つな〜!!
「それに、お前も──」
二海は、何かを言いかけて途中で止まった。
どうしたのかと思って口を開こうとすると、突然肩に腕を回されグイッと引き寄せられる。
突然の事にドキドキと心臓が早鐘を打つように鳴り出した。
「な、なに──」
“なにすんのよ”そう言おうとした時、自転車が私の横をすごい勢いで通り過ぎていく。
自転車来てたんだ・・・気付かなかった。
「・・・ちゃんと前向いとけよ」
そう言って、離れていく二海。
そっか、自転車から守ろうとして引き寄せてくれたんだ。
「あ、うん・・・ありがとう」
なんとなく恥ずかしくて、うつむきながら歩く。
まだ心臓ドキドキいってる・・・急だったからびっくりしたのかな。
「・・・にしても、なんであんなガーッて来てた自転車に気付かねぇんだ?単細胞かよ」
そっぽを向きながら、バカにしたように鼻で笑う二海。
その言葉で、うつむくのをやめて二海の方へ視線を向けた。
「アンタが自分のこと見ろって言ったんでしょ!?」
「あぁ、なるほど。単細胞だから1つのことに集中すると他がダメになっちゃうのかー、カワイソーに」
ぷぷぷ、と口に手を当てて笑いをこらえている二海に心底腹が立つ。
だけど、反論はできない。
実際に、目の前から来る自転車に気付かなかったし。
二海を睨みつけながら歩いていると、目的のお店へと到着した。
「ホラ、単細胞ちゃん。お店に着きましたよ。買うものは覚えているかな〜?いや、覚えられないよね〜、だって単細胞だもーん」
ドヤ顔で言い放つ二海に、ものすごく腹が立つけど、フゥ、と息をついて落ち着けた。
なにせ、私には秘密兵器がある。
「残念でした〜、茂木先輩にメモもらってまーす」
そう、茂木先輩から預かったメモがある。
口頭で言われてたら忘れちゃってたかもしれないけど、メモがあるなら忘れようがない。
「うわ、せこ」
「賢いって言ってくれてもいいんだよ!」
「お前が書いたんじゃねーだろバーカ、ドヤ顔すんなよ」
そんなやり取りをしながら、私達は店内に入っていった。



