球技大会も終わり、ひと段落ついた放課後。



体育館でマネージャーの仕事をしていた。



球技大会でバスケをしたからか、私も練習に混ざりたいな〜なんて思いながら、スコア表を整理していた。



「茉弘ちゃーん、ちょっといい?」



「はい、なんですか?」



バインダーを手にした茂木先輩が手招きしているのが見えた。



作業を中断して茂木先輩の元へと歩いていく。



「ちょっと買い出しをお願いできるかな?在庫を確認したらほとんど無くてさ。俺が行こうにも用事があって行けないからさ」



「わかりました、何が欲しいですか?」



申し訳なさそうな茂木先輩に対し、笑顔を見せる。



3年生が引退してからの買い出しは茂木先輩が率先してやっていたけど、今回は違うみたい。



「これにメモ書いといたよ」



そういうと、茂木先輩はスっとメモを差し出してくる。



受け取ると、かなりの量がかかれていた。



これを1人で・・・かなり重そうだ。



「多いですね」



「うん、球技大会で備品を貸し出したのもあって結構減っちゃってね。重いだろうし、あそこら辺治安も悪いから誰かに同行してもらおっか」



困ったように笑う茂木先輩は、同行する人を探すように辺りを見渡す。



そんな中、ボトルを片手にこちらに向かってくる二海が見えた。



「辻本ー、ボトル無くなったから──って、すんません、なんか話してました?」



茂木先輩が一緒な事に気付いた二海は、申し訳なさそうにしながら掲げていたボトルを下げた。



二海、もう飲み終わったわけ?



ついさっき作ったばっかりなんだけど。



「二海、ちょうど良かった。あのさ、茉弘ちゃんと一緒に買い出し行って欲しいんだ。荷物も多いし、あそこら辺は治安悪いから」



「・・・別にいいッスけど、コイツなら1人で大丈夫なんじゃないっすか?ゴリラだし」



私の方を指さして何食わぬ顔で言い放つ二海。



「はぁ!?誰がゴリラよ!!」



「もー、そういう問題じゃないの!ほら、2人で行ってきて!」



茂木先輩は二海からボトルを奪うと、その背中を押しながら体育館の扉の前までいく。



「ちょっ・・・茂木さん!?」



「ま・・・ちゃん・・・すき・・・いっ・・・きな」



「っ・・・!」



そして、茂木先輩は二海の耳元で何かを呟いて微笑んだ。



それを聞いて、少し目を見開いた二海は、片手で顔を覆い隠した。



「・・・ウィッス」



茂木先輩に小さく頷き、はぁ、とため息をついてから歩き出す。



「ゴリラ女ー、行くぞー」



「なっ、誰がゴリラ女よ!!」



「はいはい、ドラミングはよそでやってくださーい」



発言に腹を立てながら、前を歩く二海を追いかけた。