練習が終わり、後片付けの最中。
私は考え事をしていた。
茂木先輩が由紀のことを・・・好きなのかもしれない、と。
いや、まだ決まったわけじゃないけど・・・由紀に対する態度はまさにそれだった。
好きな人がいるかなんて聞くのは、大抵はその人のことが気になるから聞くわけで・・・。
茂木先輩が由紀をねぇ・・・。
「茉弘、さっきからぼーっとしてるけど・・・どうかしたの?」
「えっ!?」
由紀に急に声をかけられ、ビクッと肩を揺らす。
「あー・・・ちょっと考え事をね。気にしないで、そんなに大したこと考えてなかったから!」
両手を前に出してブンブンと振りながら答える。
正直に言うならあなたのことを考えてました。
もっと詳しく言うなら、茂木先輩は由紀のことを好きかもしれないのかって考えてました。
中高と同じ学校の仲の良い先輩の好きな人・・・少しだけ、気になってしまう。
「そう?それにしては真剣に考えてたようだけど?」
「あはは・・・」
やばい、この感じは隠しきれないかもしれない。
そんなことを考えながら、笑って誤魔化そうとする。
「笑って誤魔化してもダーメ、何考えてたの?」
でも、由紀は誤魔化されてくれなかった。
ですよね〜・・・これは正直に答えるしかないか・・・。
「白状しますよ・・・由紀は好きな人とかっているのかなー・・・なんて考えてました」
降参、と言わんばかりにため息をつく。
その言葉を聞くなり、由紀はピクっと反応した。
お、もしかして・・・いる?好きな人。
「・・・もう、そんなこと考えてたの?いるわけないじゃん」
由紀から返ってきた答えはNOだった。
今の反応、いると思ったんだけどな・・・。
「ふぅん・・・そっか」
ちょっと拍子抜けかも。
「ほら、片付け終わったんだから、早く帰るよ」
「あ、うん!」
由紀に急かされるようにして、私は帰り支度を始めた。



