茂木先輩に手伝ってもらいながらボトルを作り終え、中へと戻る。
しかも、茂木先輩がボトルのカゴを全部持って中へとはいっていってしまい、手持ち無沙汰で中にはいることになってしまった。
さすがに申し訳ないけど、有無を言わさずに持ち去ってしまった茂木先輩を追いかけていく。
「おい、なんで茂木さんが持ってきてんだよ、サボりか?」
珍しく催促に来なかった二海がタオルで汗を拭きながら文句を言いに来た。
サボりなわけないじゃん。
「茂木先輩が手伝ってくれたの。・・・持ってく時に“俺が持ってくよ”って言って全部持ってかれたけど」
私がいくら持つと言っても重いから、と譲ってくれなかったのだ。
まぁ、先輩なりの優しさなんだろうけど・・・私だってあのくらいの重さなら持って行けるのに。
「・・・ふぅん」
二海は、茂木先輩の方を見ながら興味なさそうに答え、ボトルを取りに行く。
自分で聞いてきてなんで無関心なのよ。
そんなことを考えながら、次の練習の準備にかかる。
番号が書かれているギブスも後々使うだろうから今のうちに用意しておこう。
そんなこんなで練習は進んでいき、試合形式の練習になる。
もうそろそろ由紀が帰ってきてもおかしくない時間になっできたけど・・・。
そう思っていると、ガラッと体育館の扉が開いた。
そこには、息の上がっている由紀が買った物を持って入ってきた。
「おかえり由紀、どうしたの?そんなに息切らして・・・」
いつもの由紀ならあのくらいの距離なら息なんて切らさずに帰ってくるだろうに。
「いや・・・ちょっと・・・怖い人にナンパされちゃって・・・急いで逃げてきたの」
「えっ!?嘘、ナンパ!?」
「え!?由紀ちゃん大丈夫だったの!?」
遠くで聞いていたであろう茂木先輩が、由紀の元へ駆け寄り心配する。
先輩がお願いして行った買い出し中にそんなことがあったから、少し引け目を感じてるのかな。
「大丈夫です、ちょっと怖かったけど走って逃げたら追いかけてこなかったので」
「そっか。良く耐えたね」
少し安心したような表情を浮かべながら由紀の頭を優しい手つきで撫でる。
“由紀ちゃんって、好きな人いるのかな?”
ボトルを作っていた時の言葉がふと頭をよぎる。
茂木先輩・・・まさか、由紀のこと・・・?



