ドリンクを作り終え、ボトルやウォータージャグを持って体育館の中へと入る。
所定の場所に置いて一息ついた時、練習相手が到着したようだった。
体育館のなかに入るなり整列し、私たちに向けてあいさつをする。
「きをつけ!お願いしますっ!!」
茂木先輩の掛け声で、その場で入ってきた練習相手にお辞儀をする。
整列しなくていいのかな、なんて考えてるうちにみんなが顔を上げて持ち場に戻る。
茂木先輩は相手のコーチであろう人と会話を始めた。
うちにはコーチはいない。
担当の先生はいるけど、それは名ばかり。
ほとんど部活に姿を現さず、茂木先輩が主将兼コーチみたいな役回りをしているみたいだ。
それを知った時はめっちゃ驚いたけど・・・でも、茂木先輩はそれをいとも簡単にやり遂げてしまうみたい。
次の部長になる人、大変だろうな。
「みんな、ウォーミングアップ後に練習試合始めるからね!」
相手のコーチとの会話を終えて戻りながら言葉を発する茂木先輩。
その言葉に、その場にいる全員が返事を返した。
「ウォーミングアップ終わったらすぐ試合始まるから、スコア表用意しといて」
「はい」
ウォーミングアップを始めようとしている茂木先輩が、タオルなどをベンチに置きながら声をかけてくる。
その言葉で、荷物の中に入っていたスコア表を取り出した。
「今日は由紀中心に書いてみて。私、隣で見てるから」
「うん、わかった」
取り出したスコア表を由紀に手渡しながらお願いをする。
由紀は、それを受け取るとバインダーにセッティングしてすぐに書けるようにした。
これでいつでも準備OKだ。
「お、今日は三島がスコア表書くのか。ミミズみたいな字を読み解くことしなくて済むな」
ベンチに荷物を置こうとしている二海が、私達の会話を聞いていたらしい。
由紀が書くことになって心底嬉しいと言わんばかりの言動に引っ掛かりを覚えた。
「私だって丁寧に書けば綺麗にかけますぅー!!」
「じゃあ最初から綺麗に書いとけよ、だからガサツなんだよお前は」
「ガサツで悪かったわねっ!」
つんつん、と二海に額を指でつつかれ、それを振り払いながら言葉を吐き出す。
ガサツだとは言われてきたけど、こうも真正面から言われると来るものがあるな。
「・・・二海くん、もうそろそろアップいった方いいんじゃない?他の人たちも集まってるし」
近くにいた由紀が、二海に対して声をかける。
「おぅ、そうだな。・・・じゃーな、ガサツ女。せいぜいそのガサツさを隠してマネの仕事しろよ」
「うるさいわね、さっさと行きなって」
去り際にも余計な一言を残す二海。
そんな彼を呆れながら見送った。



