そう思った時、後ろから手が伸びてきて私のお腹に手が回された。
「って・・・危ねぇなぁ・・・」
耳元で聞こえる二海の声──つまりは、お腹に回されてるこの腕は二海のものなわけで。
この状態は、言うまでもなく後ろから抱きしめられてる構図になってる。
転びそうになったせいなのか、この体勢のせいなのか、私の心臓はいつもの倍近くドキドキと早く鳴り響いていた。
「っ・・・・・・」
「・・・おい、大丈夫かよ。足でもひねったか?」
近くから聞こえる二海の声。
その声は、少しだけ甘く聞こえてくる。
「だっ・・・だい、じょうぶ・・・なんともない・・・」
ドクンドクンと高鳴っている心臓の音がバレないか不安になりながら、何とか言葉を紡ぐ。
その言葉でお腹に回されていた腕は離れ、二海が視界に入る。
「ったく・・・段差あることぐらい気付けよ」
「う、うん・・・ごめん。ありがとう」
気恥ずかしくて二海の顔を見ずにお礼を言う。
さっきまで口論してた人に助けられるとは思わなかった。
しかも、まさか二海に助けられるとか。
転ぶまで見てて“あほ”だの“マヌケ”だの言われるかと思ったのに。
「・・・おい、ずっと動かねぇけど・・・やっぱ足ひねったのか?どっちだ」
2、3歩前を進んでいた二海が動こうとしない私に近付き足元へしゃがみこむ。
そして、優しい手つきで私の足に触れる。
「ち、違うって!大丈夫だから!」
「うぉっ」
慌ててその場で駆け足をして痛くないことを証明する。
近くにいた二海は体をのけぞらせてびっくりしていた。
「・・・元気なのはわかったから、足踏みやめろ。蹴られそうで怖ぇ」
二海の言葉で足踏みをやめる。
「なんともねぇなら部室戻って荷物取ってくんぞ」
「う、うん」
その言葉で、私達は荷物を取りに部室へ戻る。
その間も私は高鳴っている心臓の音を抑えるのに必死だった。



