二海に変わってもらった荷物を置き、周囲を見渡す。
そこには、荷物を置こうとしている茂木先輩と、私の持っていた荷物をかわりに持ってくれた二海の姿があった。
その時、ふと茂木先輩と視線が重なる。
「あっ、茉弘ちゃん。ごめんね、重たいもの持たせちゃって」
荷物を置いた茂木先輩が、パタパタと私の方に走ってきてパンっと両手を合わせる。
「あ、いえ・・・二海が途中で気付いて変わってくれたんで平気です 」
「え、二海が?茉弘ちゃんがおねがいしたんじゃなくて?」
「はい、二海が軽い方の持ってけって・・・」
そういうと、茂木先輩は少し考え込む様子を見せる。
どうしたんだろう。
「・・・そっか・・・そういうこと・・・」
茂木先輩は愛おしいものを見たかのような笑顔を見せながら噛み締めるようにつぶやく。
わ、珍しい表情。
「なにがですか?」
「ううん、なんでもない。とにかくありがとね。もうそろそろ由紀ちゃんも来るだろうから、2人が揃ったらドリンクお願いね」
「はい」
茂木先輩に聞いてもなんでもないって返されてしまった以上、掘り下げ待て聞ける様子もなかったので、大人しく引き下がる。
それにしても、なんであんな表情したんだろう。
私、変なこと言ったかな?
そんなことを考えながら、茂木先輩が去った後ろ姿を見る。
「おっ、野蛮人でも壊さずに持ってこれたか」
ニヤニヤしながら私に近づく二海。
その言葉を理解した途端、煮えくり返りそうなほどの怒りを感じた。
「はぁ!?壊すわけないでしょ!?毎回毎回黙って聞いてれば好き勝手言ってくれちゃってさぁ!!」
持ってきてくれたお礼を言おうと思ってたのに、怒りのボルテージがぐんぐん上がっていくせいでお礼のおの字も実行できそうにない 。
「人が運んでやったのにお礼もなしですかぁ?野蛮人はこれだから嫌だね」
「お礼したくないようなこと言ってんのは誰よ!もやし野郎!」
「残念でしたぁ、俺は細マッチョですぅ〜!」
言い合いをしながら体育館を出て部室へと戻ろうとする。
だけど、言い合いに夢中になっていて段差があることに気付かなかった。
足を踏み外し、グラッと体勢が崩れる。
やばい、倒れる・・・!



