部活が終わり後片付けをしている最中、由紀がスコア表を眺めていた。
「・・・わたし・・・が・・・・きれい・・・のに・・・」
ボソッと聞こえてきた由紀の呟き、だけどほとんど聞こえなかった。
「由紀、どうかした?」
「あっ、ううん。ちょっと書き方難しいなって思って」
パッとかおをあげたあと、スコア表を片付ける由紀。
でも、わたし、キレイって言ってたけど・・・。
「由紀のスコア、綺麗にかけてたよ。後半は言わなくてもかけてたし」
「そう?なら嬉しいな」
フフっと笑って片付けを再開する由紀。
「私ももっと丁寧に書かなきゃ・・・アイツに“読めない”って言われるから」
ちょうど近くてモップがけをしていた二海を睨みつけながらつぶやく。
二海は、私が睨みつけているのに気付いたらしく、ニマニマと笑みを浮かべ、口パクでこう言った。
『ド下手くそ』と。
「っ〜!!アンタの字も似たようなもんでしょ!!」
「残念でしたぁ、俺は綺麗な方でーす! 」
私達の近くを通る時に、思わず口に出すと、綺麗な方だと言われた。
確かに二海の文字前に見た時かなり綺麗だったけど・・・!!
アイツに罵られるほど私の文字は汚くないはずだ。
・・・課題に追われてた時は、ミミズみたいな字になるけど・・・。
「ムカつく〜!!」
「・・・でも、その割には二海くんと話すよね。仲良さそう」
「アイツがケンカ売ってくるからってだけ!別に仲良くなんかない!」
そうだ、誰があんなヤツと仲良いんだ。
顔合わせる度に口喧嘩してるようなもんなのに。
「・・・ふぅん」
「モップもかけたし、荷物持って部室帰るよー。明日は8時から他校と練習試合だからね〜」
興味無さそうな由紀の返事をかき消すように、茂木先輩が帰ろうと促す。
その言葉に部員達はゾロゾロと荷物を持つ。
私も近場にあった荷物を持とうとしたけど、思った以上に重かった。
「うわおっも!!」
思わず声が出てしまうぐらいの重さにびっくりする。
「あぁ茉弘ちゃん、それ重いから変わるよ」
茂木先輩が慌てたように駆け寄ってきて、荷物をやさしく奪い取る。
そして、重さなんて感じさせずにヒョイと持ち上げた。
「ありがとうございます。力強いですね」
「そうかな?まぁ、鍛えてるからね。あと、明日も時間あればお手伝いよろしくね」
「はい」
両手で荷物を持っていく茂木先輩。
すごいなーと感心していると、私の後ろで立ち往生している二海の姿が見えた。
「二海、なにしてんの?」
「・・・・・・別に」
そう言ってスタスタと部室まで歩いていく二海。
どうしたんだ?
「・・・・む・・・つ・・」
隣にいる由紀も由紀でボソッと何かを呟いてるし。
みんなしてどうしたんだろう。



