翌日──
私の体調も少しずつ良くなり、学校に向かう。
本当なら今日も休んでもいいんじゃないのか、と言われたけど・・・さすがにこれ以上休んだら単位が足りなくなってしまう。
それじゃなくても去年はギリギリの進級だったし、今年は危ない橋を渡りたくない。
そんなことを考えながら電車に乗り込む。
そこには、やはりと言うべきか・・・二海の姿があった。
「よぉ、雑食ゴリラ復帰か?ドラミングは程々にしろよ?」
開口一番に暴言来ました。
いつもの事ながら飽きないものだ。
「そっちこそ朝から調子がいいようで」
腹が立つけどまだ万全じゃない自分の体力の温存のため、煽り返すのを控える。
それじゃなくても毎日罵倒し合ってるんだ、たまには息抜きぐらい欲しい。
そんなことを思っていると、いつものガタンッという大きな揺れが車体を襲う。
さすがにもう慣れたもの、近くのつり革に捕まり難を逃れる。
「あー、良かった。知恵をつけてくれたおかげで今日はタックル喰らわずにすみそうだわ」
顔を上げると、胸元に手を当ててホッと一息付きながらニヤニヤと私を見つめていた。
「はぁ!?毎日タックルなんてしてないでしょ!?」
「してるだろ。それとも自覚無し?うわ、タチ悪」
口元に手を当ててうわ・・・と引いているであろう二海。
だけど私は毎日タックルしてる訳では無い。
確かに初日は思いっきりぶつかっちゃったけど・・・それっきりだし。
「ひとーつ、電車に乗ってる時」
それは私だって知ってる事だ。
それに関しては本当に悪かったと思ってる。
「ふたーつ、お前が荷物運んでる時」
「荷物・・・?って、あれはタックルしたって言わないじゃん!」
二海に荷物を運んでもらった時のことを思い出す。
あの時はフラついて軽くぶつかってしまったぐらいだった気がするんだけど。
「みーっつ、これまた電車に乗ってる時」
「あれは二海が支えてくれたってだけでタックルはしてないじゃん!」
電車でふらついて転びそうになってるところを二海が支えてくれただけだ。
正しく言えばタックルはしてない。
「よーっつ、お前が階段から突き落とされた時」
「あれは不可抗力じゃん」
いじめっ子の男子が私を突き飛ばして階段から落ちた時のことを思い出す。
だけど、あれはいじめっ子のせいだし・・・私が悪いわけじゃないんだけどな。
「1週間でこんだけタックルされてんだぜ?俺、カワイソー」
「なんならもっと増やしてあげようか!?」
「うわぁ、雑食ゴリラが突進してくる〜!」
腹が立って二海を突き飛ばそうと手を伸ばすと、ヒョイと避けられる。
でも・・・なんだろ・・・コイツ、今日テンション高くない?
気のせいかな?



